業務効率化

freeeMCPの体験 できる事とできない事

2026年3月、freee 株式会社が公式のMCPサーバー「freee-mcp」を公開しました。

MCPは、Claude などのAIエージェントから操作できる仕組みです。

これによりfreeeのAPI(約270本)を自然言語で操作できるようになりました。

「請求書処理も、仕訳登録も、AIに話しかけるだけで終わる」

当初はそんな期待が溢れかえっていました。

弊社でも、とある税理士の先生からの依頼を受け、freeeMCPを実際に動かしてみました。

結論からお伝えすると、「使える領域」と「まだ使えない領域」がはっきり分かれます

とくに、多くの中小企業がつまずくのが「消込ができない」という問題です。

この記事は、freee MCPに限定した、現場のリアルな制約と回避策を整理した内容です。

AIエージェント全般のメリットや選び方など、全体像を体系的に知りたい方は、株式会社VISIONARY JAPAN社のガイド記事(末尾に参考記事として掲載)を合わせて読むと、机上の整理と現場感の両方が揃うと思います。

freeeMCPでできる事

実際に動かしてみて、「これはAIに任せられる」と感じた領域は以下の通りです。

  • 取引明細・仕訳・残高の参照: 「先月の交際費の一覧を出して」「未処理の明細を取得して」といった自然言語での問い合わせ
  • 取引の新規登録: 紙の領収書をOCRしてからAIエージェント経由で登録、など
  • 請求書の作成: 過去データを参照しながら、同じ形式で繰り返し作成
  • 自動登録ルールの作成・更新: 「カードモバイル → 口座振替」のようなマッピングを対話的に作る
  • 取引内容の分類提案: 勘定科目・取引先・品目・税区分の判定を、過去パターンから提案

ここまでは、デモとして見せても「すごい」と言わせるレベルにあります。

freee MCPでできないこと(現時点の制約)

一方、「これはまだAIエージェントに任せきれない」領域もはっきりあります。

1. 消込(明細と取引の自動紐付け)

これが最大の壁です。

freee には「明細(wallet_txn)」と「取引(deal)」という、2つのデータが別々に存在します。

  • 銀行・カードから取り込まれた明細(wallet_txn)
  • 帳簿に記録される取引(deal)

freee の画面上で明細を選んで「登録」を押すと、取引が作られると同時に明細が「処理済み」になります。これが消込です。

ところが、API経由で取引を登録しても、対応する明細は「未処理」のまま残ります。さらに厄介なのは、freee API には「明細と取引を紐づける通信先(エンドポイント)」自体が存在しない点です。

やや専門的な話になりますが、GitHubというサイトでやり取りが記録されています。(Issue #313)。

ただし、この Issue は “Closed as not planned”(対応予定なし)として閉じられており、根本原因は MCP 層ではなく freee API スキーマ自体の制約であると記載があります。

API スキーマ側では Feature Request として (Issue #541) が Open のまま残っていますが、2026年5月時点で具体的な対応時期は示されていません。

つまり、消込API の追加を待つのは現実的ではないと捉えるのが安全です。

結果として、こうなります。

  1. AIエージェントが取引を登録
  2. freee の帳簿には記録される
  3. しかし「自動で経理」画面には未処理明細が残り続ける
  4. 最終的に人間が freee UI で手動消込が必要

つまり、「AIで全自動」を狙っても、現状では消込のためにUI操作が残ることになります。

2. 入金消込(売掛金の回収管理)

入金消込(売掛金 ↔ 入金明細のマッチング)も、freee MCP単独では完結しません。

  • 振込手数料が引かれた金額のズレ
  • 複数請求の合算入金
  • 1件の請求への分割入金

このあたりの異常系は、銀行API・バーチャル口座サービス・kintone等と組み合わせたアーキテクチャを別途設計する必要があります。

他にも、下記のような制約があります。

  • 配賦(はいふ)・・共通費を複数に按分する処理・・API経由で呼び出せない
  • 貸借判定・・amountの符号は常に正。正しく判定しないと全て支出扱いになる

制約を回避できる2つのフロー

ここまで制約の話を続けましたが、「消込問題を回避するフロー」を組めば、AIエージェント × freee の組み合わせは十分に実用に耐えます。弊社の検証結果と、先行して試された方々の知見から、現実的な2つのフローを整理しました。

フロー1:口座・カード明細がある場合

  1. AIエージェントで未処理明細を全件取得
  2. AIが勘定科目・取引先・品目・税区分を判定
  3. AIが 「自動登録ルール」のCSV を生成
  4. freee にCSVインポート
  5. 「自動で経理」画面で一括登録 → 消込も同時に完了

ポイントは、APIで取引を直接作らずに、「自動登録ルール」を経由すること。これで消込問題を回避できます。

フロー2:紙レシート・現金払いの場合

  1. レシートをスマホ等で撮影
  2. OCR(Claude や Gemini など)でデータ化
  3. AIエージェントが freee API で直接取引を登録
  4. 明細が存在しない取引なので、消込は不要

現金払いには口座明細が存在しないので、API直接登録で完結します。


中小企業の経理にこう効く

制約と回避フローを踏まえると、freee MCP は 中小企業の経理業務に対して、十分に大きなインパクトを与えうるツール だと言えます。とくに効くポイントは以下です。

  • 毎月の明細分類が、数時間 → 数十分に圧縮できる
  • 自動登録ルールの整備が、AIとの対話で一気に進む
  • 仕訳の属人化が解消され、担当者が変わってもルールが残る
  • 月次の数字が早く出るので、経営判断のスピードが上がる

「全部AI任せ」ではなく、「現状の freee MCP で効くところだけを正しく抜き出す」アプローチであれば、PoC から本番運用までのハードルは想像より低いです。

中小企業が「うまく始める」ための3つの進め方

ここまでの内容を踏まえて、AIエージェント × freee を現実的にうまく導入していくためのコツを3つにまとめます。

① まずは「試行期間」を設ける

freee MCP は、導入してすぐに実践投入できる、という性質のツールではありません。

まずは小さく1つずつ試す期間を設けて、自社の経理業務のうちどれがAIに任せられて、どれがそうでないかを見極めることをおすすめします。

たとえば、

  • 「先月の交際費の一覧を出させる」
  • 「特定の取引先の明細だけ分類提案させる」

といった、影響範囲の小さいタスクから始める。そこで AI の挙動の癖、ミスのパターン、どこで人間の判断が必要かが見えてきます。

試行期間を飛ばして本番投入すると、想定外の挙動でやり直しが発生し、かえって導入コストがふくらみます。

「いきなり全業務」ではなく、「まず1業務、それも一部から」が、結果的に近道です。

② セキュリティ・権限まわりは最初から押さえる

経理データは機密性の高い情報です。試行段階であっても、以下は最初から押さえておきます。

  • API キーの管理: Client ID / Client Secret は、うっかり GitHub などにアップロードすると一発で漏洩する可能性があります。.env や Secrets Manager 等で隔離が必須です。
  • テスト事業所での検証: いきなり本番事業所で動かさず、freee の 開発用テスト事業所(サンプルデータ入り)で挙動を確認します。
  • 外部 AI サービスの契約・データ取扱: 入力したデータが学習に使われない契約か、ログがどこに残るか、といった点を最初に確認しておきます。

ここを後回しにすると、本番移行のタイミングで作り直しが発生しがちです。

③ 確認の頻度は、段階的にゆるめる(ただし「ゼロ」にはしない)

最初は、AIが出した結果を1件ずつ、その都度確認するスタンスから始めます。判定の癖(どの勘定科目を間違えやすいか、どの取引先で迷うか)を把握する期間です。

動きが見えて挙動が安定してきたら、確認のタイミングを段階的に後ろにずらしていくイメージで運用します。

フェーズ確認のタイミング
導入直後全件・その都度確認
慣れてきた半日に1回、まとめて確認
安定期1日に1回、まとめて確認
成熟期2〜3日に1回、まとめて確認

ポイントは、「確認の量」を減らすのではなく、「確認のタイミング」を後ろにずらすこと。サンプリングや異常値だけのチェックに切り替えてしまうと、見落としのリスクが残ります。経理業務はコンプライアンス上のインパクトが大きいので、最終的にもサイクルはゆるめるが、見る量は減らさないほうが無難です。

加えて、AIが「これは怪しい」と自覚した取引(信頼度の低い判定、過去パターンから外れる取引、など)は、サイクルに関係なくその場でアラートを上げる仕組みにしておくと、致命的な取りこぼしを防げます。

ゆるめるけど、ノーチェックにはしない

このあんばいが、現場でうまく回す勘所だと思います。

注意:「自動化バイアス」という落とし穴

もうひとつ、サイクルをゆるめたあとに注意したいのが「自動化バイアス」です。これは、AIが安定して動いているように見えるほど、人間側の確認が無意識に雑になる現象で、航空・医療・金融の事故分析で繰り返し報告されてきました。「だいたい合ってるからOK」と慣れて油断してしまうと、サイクルがゆるんだ時期に致命的なミスを見逃します。

対策として、サイクルをゆるめたあとも、

  • 月に1回など、定期的に「無作為サンプル」の深掘り監査をはさむ
  • AIに「なぜこの判定をしたか」の根拠を出させる(根拠を見るチェックに変える)

の2つを組み合わせると、効率と品質を両立しやすくなります。「ふだんは速く回し、たまにちゃんと見る」の合わせ技です。


参考記事

AIエージェントを経理業務にどう活用するか、ツール選定、メリット・デメリット、導入ステップを体系的に整理したい方には、株式会社VISIONARY JAPAN社の以下のガイド記事がよくまとまっています。

参考記事: 【決定版】経理のAIエージェント活用ガイド|導入ステップや選び方を解説 | 株式会社VISIONARY JAPAN

まとめ

freee MCP は、現時点でも中小企業の経理業務を着実に変える力を持ったツールです。ただし、消込・配賦・入金消込といった制約がはっきり存在することを踏まえ、

  • 小さく試す期間を最初に設けて、
  • セキュリティは最初から押さえ、
  • 確認の量は維持しつつ、タイミングだけ段階的にゆるめていく

という進め方が、現場でうまくいく感覚に近いと思います。

弊社では、freee MCP を使った経理業務の改善設計・PoC・本番移行も伴走支援しています。「興味はあるけど、自社のどこに当てはまるかわからない」段階のご相談で構いません。お気軽にどうぞ。

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