AI時代の追い風ラジオ

第1回 AIに申込フォームを作らせたら、完成…ではなかった話

AI時代の追い風ラジオ。
この番組は、AIが当たり前になった時代に、つくる、はたらく、そだてる人の追い風になる話を、ゆるく、でも現場目線で考えていく番組です。
ハヤテ君
できた!
ハヤテ君
AIに頼んだら、申込フォーム、一瞬でできたっしょ!
エージェント
完璧です!
カナちゃん
……えっ。
カナちゃん
その“完璧”って、誰が確認するんですか?
テイル先輩
お、いい質問。
テイル先輩
今日はそこを考えてみようか。
テイル先輩
AIが作ったものは、どこからが“完成”なのか。
第1回のテーマは、「AIに申込フォームを作らせたら、完成……ではなかった話」。
題材は、AI勉強会の公開収録イベントで使う、参加申込フォームです。
名前、メールアドレス、参加人数、質問欄、送信完了画面。そして管理者用の参加者一覧。

① AIで“画面”はすぐ作れた

ハヤテ君
いやー、最近のAIすごいね。
ハヤテ君
「イベント申込フォーム作って。いい感じのデザインで」って頼んだら、もう画面がバーンって出てきた。
カナちゃん
へえ。どんな機能があるんですか?
ハヤテ君
名前入力できるでしょ。
ハヤテ君
メールアドレス入れられるでしょ。
ハヤテ君
参加人数も、質問欄もある。
ハヤテ君
送信したら、管理画面に一覧で出る。
ハヤテ君
ね?完成っしょ。
エージェント
完璧です!
カナちゃん
……うーん。
ハヤテ君
え、なにその間。
テイル先輩
カナちゃん、何が気になった?
カナちゃん
画面はできてるんですけど……。
カナちゃん
これ、本当にイベント当日に使って大丈夫なのかなって。

② 「本番で使える?」を疑う

ハヤテ君
大丈夫でしょ。送信できるんだし。
カナちゃん
たとえば、メールアドレスを間違えた人には、どう連絡するんですか?
ハヤテ君
あー……。
カナちゃん
同じ人が、2回申し込んだら?
ハヤテ君
んー……。
カナちゃん
定員30人なのに、31人目が申し込んだら?
ハヤテ君
それは……気合いで椅子を増やす?
テイル先輩
椅子の問題だけならいいんだけどね。
カナちゃん
あと、個人情報ですよね。
カナちゃん
参加者一覧って、誰でも見られたらまずいですよね?
ハヤテ君
……あ。
エージェント
一覧画面はあります!
テイル先輩
うん。あるね。
テイル先輩
でも、「ある」と「安全に使える」は、同じじゃない。

③ “完成”ってどこから?

ハヤテ君
じゃあ、AIが作ったこれは、未完成ってこと?
テイル先輩
未完成、というより。
テイル先輩
“たたき台としては、すごく優秀”って感じかな。
ハヤテ君
たたき台かー。完成じゃなくて?
テイル先輩
逆に聞くけど。
テイル先輩
このフォームを、明日の本番イベントで本当に使うとしたら、何が確認できていれば安心?
カナちゃん
まず、変な入力を止めたいです。
カナちゃん
メールアドレスの形式とか、参加人数がゼロになってないかとか。
ハヤテ君
あー、参加人数ゼロ。ありそう。
カナちゃん
あと、送信ボタンを連打したらどうなるか。
ハヤテ君
それ俺、やるかも。
テイル先輩
やる人を責めるんじゃなくて、やっても壊れないようにする。
カナちゃん
管理画面は、管理者だけが見られるようにしたいです。
カナちゃん
それと、申込後に確認メールもほしいです。
カナちゃん
申し込めたか不安になる人、いますよね。
テイル先輩
いいね。いま出てきたものが、完成に近づくための条件なんだ。
ハヤテ君
条件?
テイル先輩
そう。画面があるかどうかじゃなくて、使う人が困らない状態になっているか。
テイル先輩
それを確認するための条件。
テイル先輩
開発の言葉では、受け入れ条件、なんて呼んだりするね。
ハヤテ君
受け入れ条件……。
エージェント
受け入れます!
テイル先輩
エージェント君は、もう少し待とうか。

④ AIへの「頼み方」を変える

ハヤテ君
でもさ、そういう条件を考えるのって、結局人間が全部やるの?
ハヤテ君
それだと、AIで速く作った意味、ちょっと減らない?
テイル先輩
そこが面白いところで。
テイル先輩
AIは、作るだけじゃなくて、見落としを洗い出す相手にもなる。
カナちゃん
たとえば、どう聞けばいいんですか?
テイル先輩
最初の頼み方が、こうだったよね。
ハヤテ君
イベント申込フォームを作って。名前、メール、参加人数、質問欄があって、管理画面で一覧できるようにして。いい感じのデザインで。
テイル先輩
これは、形を作るにはいい。
テイル先輩
でも、本番に近づけたいなら、次はこう聞く。
テイル先輩
この申込フォームを実際のイベントで使う前提で、想定される入力ミス、二重申込、定員超過、個人情報の扱い、管理者権限、確認メール、スマホ表示の観点から、受け入れ条件とテスト項目を洗い出して。
カナちゃん
あ、作って、じゃなくて。
カナちゃん
使う前提で、何を確認すべきか出して、って聞くんですね。
テイル先輩
そうそう。
テイル先輩
AIに完成宣言をさせるんじゃなくて、完成条件を一緒に作る。
ハヤテ君
なるほどなー。
ハヤテ君
俺、AIに「完成?」って聞いてたわ。
エージェント
完成です!
ハヤテ君
ほら、すぐ言う!
テイル先輩
だから、AIの「完成です」をゴールにしない。
テイル先輩
人間が、「何を満たしたら完成か」を持つ。

⑤ 本番前チェックリスト

ここで、申込フォームを本番で使う前に見たいチェック項目を整理します。
テイル先輩
まず、入力チェック。
テイル先輩
名前が空じゃないか。メールアドレスの形になっているか。参加人数が1人以上か。
カナちゃん
次に、二重申込や連打ですね。
カナちゃん
同じメールアドレスで何度も申し込めるのか、送信ボタンを連打したらどうなるのか。
ハヤテ君
定員超過も見る。30人までなら、31人目をどうするか。
テイル先輩
そう。受付停止にするのか、キャンセル待ちにするのか。
カナちゃん
管理画面は、管理者だけが見られるようにする。
ハヤテ君
個人情報を、必要以上に持たない。
テイル先輩
送信後の確認メールも大事。
テイル先輩
そして、スマホでちゃんと使えるか。
カナちゃん
たしかに、イベント申込ってスマホから多そうです。
テイル先輩
最後に、これらをテストできる形にする。
テイル先輩
たとえば、「メールアドレスが空ならエラーが出る」とか、「31人目はキャンセル待ちになる」とか。
ハヤテ君
あー、やっとわかった。
ハヤテ君
AIが作った画面を見て、「すげー!」で止まってた。
ハヤテ君
でも本当は、「これで困る人いない?」まで見る必要があるんだ。
テイル先輩
それ。
テイル先輩
いいものを作るって、コードを書くことだけじゃない。
テイル先輩
使う人が困らないように、先回りして考えることでもある。

今日のまとめ

今日のまとめです。
テイル先輩
ひとつ目。AIで画面はすぐ作れる。でも、画面があることと、本番で使えることは違う。
カナちゃん
ふたつ目。完成に近づけるには、入力ミス、二重申込、定員、個人情報、権限、確認メールなど、使う場面を考える必要がある。
ハヤテ君
みっつ目。AIには「完成?」って聞くより、「完成条件とテスト項目を洗い出して」って聞く。
エージェント
完成条件、生成します!
テイル先輩
うん、それはいい使い方。
テイル先輩
AI時代に大事なのは、AIより手で速く作ることじゃない。
テイル先輩
AIと一緒に、何を満たせばいいものになるのかを考えられること。
AI時代の追い風ラジオ。第1回は、「AIに申込フォームを作らせたら、完成……ではなかった話」でした。
この回の台本と、申込フォームの受け入れ条件チェックリストは、概要欄のページにまとめています。
それではまた次回。あなたのつくる、はたらく、そだてるに、よい追い風が吹きますように。

申込フォーム 受け入れ条件チェックリスト

番組の中で紹介があった、受け入れ条件について、チェックリストを作っています。

ぜひ参考にしてみてくださいね。

対象:AI勉強会 公開収録イベントの参加申込フォーム
考え方:「画面がある」ではなく「本番で使う人が困らない状態か」を確認するための条件です。各項目は、できるだけ テストできる形(〜なら〜になる) で書いています。本番前に、上から実際に試してチェックを付けてください。

1. 入力チェック(バリデーション)

  • [ ] 名前が空のまま送信できない
    テスト:名前を空欄で送信 → エラーが出て送信できない。
  • [ ] メールアドレスは形式を満たさないと送信できない
    テスト:abc(@なし)で送信 → 「メールアドレスの形式が正しくありません」が出る。
  • [ ] 参加人数は1人以上しか入れられない
    テスト:参加人数に 0 や空欄、マイナスを入れて送信 → エラーになる。上限(例:1〜10)も決めておく。
  • [ ] 質問欄は任意で、長文・記号・空欄でも壊れない
    テスト:長文や絵文字、空欄で送信 → 文字化け・・レイアウト崩れ・エラーなく登録される。
  • [ ] エラー時に、何をどう直せばいいかが画面に表示される
    テスト:複数項目をわざと間違える → どの項目が原因か分かるメッセージが出る。

2. 二重申込

  • [ ] 同じメールアドレスで重複申込したときの挙動が決まっている
    テスト:同じメールでもう一度申込 → 「受付済みです」等の案内が出る(または重複を許可する方針が明文化されている)。
  • [ ] 送信ボタンを連打しても、二重登録されない
    テスト:送信を素早く連打 → 一覧に1件だけ登録される(送信中はボタンが押せない/二重送信が防がれる)。
  • [ ] 通信が遅い・途中で失敗したときに二重送信や無反応にならない
    テスト:低速回線や送信失敗を想定 → 「送信中」表示やリトライ案内が出て、状態が分かる。

3. 定員管理

  • [ ] 定員(例:30人)を超える申込の扱いが決まっている
    テスト:定員到達後に申込 → 「受付終了」または「キャンセル待ち」に切り替わる(どちらにするか事前に決める)。
  • [ ] 定員ちょうど・残り1席のきわどい同時申込でも、超過しない
    テスト:残り1席で2人がほぼ同時に申込 → 片方だけ受付、もう片方はキャンセル待ち等になる。
  • [ ] 管理者が現在の申込人数・残席を確認できる
    テスト:管理画面で「申込◯人/定員◯人」が分かる。

4. 個人情報・権限

  • [ ] 参加者一覧(管理画面)は、管理者だけが見られる
    テスト:ログインしていない人・URLを直打ちした人 → 一覧を見られない(ログインやパスワードが要る)。
  • [ ] 個人情報を必要以上に集めない
    確認:取得する項目は名前・メール・参加人数・質問欄に絞る。不要な情報は集めない。
  • [ ] 取得した個人情報の使い道・保管・削除の方針が決まっている
    確認:何のために使い、いつ消すかを申込画面に明記する。
  • [ ] 一覧やメールの内容が、第三者から推測・閲覧されない
    テスト:URLの番号を変える等で他人の申込が見えないか確認する。

5. 確認メール・完了画面

  • [ ] 送信後に「申し込めた」と分かる完了画面が出る
    テスト:申込完了 → 受付番号や次の案内が表示され、申込済みだと分かる。
  • [ ] 申込者に確認メールが届く
    テスト:申込 → 入力したアドレスに、内容控え(日時・人数等)のメールが届く。
  • [ ] メールが届かない場合の問い合わせ先が案内されている
    確認:「届かない場合はこちら」の連絡先が完了画面かメールに書かれている。

6. スマホ・表示

  • [ ] スマホで、入力から送信まで問題なくできる
    テスト:スマホ実機で入力・送信 → ボタンや入力欄が押しやすく、はみ出しがない。
  • [ ] スマホのキーボードが入力内容に合っている
    テスト:メール欄で @ が出しやすいキーボード、人数欄で数字キーボードが出る。
  • [ ] 文字サイズ・コントラストが読みやすい
    確認:小さすぎる文字や薄すぎる色がなく、エラー表示も読める。

7. 受け入れテスト(本番前に通すシナリオ)

  • [ ] 正常系:名前・正しいメール・参加人数1以上で申込 → 完了画面+確認メール+一覧に1件追加。
  • [ ] 入力ミス系:メール空欄/人数0/名前空欄 → それぞれエラーで止まる。
  • [ ] 連打・二重系:送信連打・同一メール再申込 → 二重登録されない。
  • [ ] 定員系:定員到達後の申込 → 受付終了またはキャンセル待ちになる。
  • [ ] 権限系:未ログインで一覧URLにアクセス → 見られない。
  • [ ] 端末系:スマホ実機で一連の申込が完了する。

完成の定義

上のすべてにチェックが付き、「困る人がいない?」まで確認できた状態を、このフォームの“完成”とします。(番組で言った「AIに『完成?』と聞くのではなく、『受け入れ条件とテスト項目を洗い出して』と聞く」の、その答え側がこのリストです。)

※定員超過の方針は、受け入れ終了かキャンセル待ちか、方針で変更がありえます。

他のエピソード

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