AI時代の追い風ラジオ

第12回 AIで作った社内ツール、数年後に誰が面倒を見るの?

AI時代の追い風ラジオ。
この番組は、AIが当たり前になった時代に、つくる、はたらく、そだてる人の追い風になる話を、ゆるく、でも現場目線で考えていく番組です。
社長
いやあ、最近すごいですね。
社長
AIに頼めば、社内ツールくらい自分たちで作れそうじゃないですか。
ハヤテ君
ですね!
ハヤテ君
問い合わせ分類AI、見積チェックAI、議事録まとめAI。
ハヤテ君
全部内製できるっしょ!
エージェント
内製、できます!
担当者さん
便利なのは、すごく分かるんですけど……。
担当者さん
それ、数年後に誰が面倒を見るんでしょうか。
ハヤテ君
え?
ハヤテ君
ドキュメントもAIに書かせればよくないですか?
田中さん
あの……。
田中さん
昔、VBAでも同じような話を聞いた気がします。
カナちゃん
……VBAの再来、ですか?
テイル先輩
今日はそこを考えてみようか。
テイル先輩
AIで作れる時代に、作った後の責任をどう設計するか。
今回のテーマは、「AI内製の末路はVBAと同じになるのか?」。
AIで社内ツールを作れるようになった今、現場のスピードは大きく変わり始めています。
でも、便利なツールが増えるほど、こんな不安も出てきます。
それ、誰が直すの?誰が引き継ぐの?誰が正しい使い方を判断するの?

① AIで社内ツールがどんどん作れる時代

社長
うちも、そろそろAIを使っていきたいんですよ。
社長
たとえば、問い合わせを分類したり、見積書をチェックしたり、議事録をまとめたり。
社長
そういうの、外注しなくても社内で作れる時代なんじゃないかなって。
ハヤテ君
いけますいけます。
ハヤテ君
AIに「この業務を楽にするツール作って」って言えば、けっこう形になりますし。
エージェント
業務効率化ツール、生成します!
カナちゃん
たしかに、すごく便利ですよね。
カナちゃん
ちょっとした集計とか、文章の下書きとか、分類とか。
カナちゃん
これまではシステム化するほどじゃなかった作業にも、手が届く感じがします。
テイル先輩
そこは、本当に大きな変化だね。
テイル先輩
昔なら、ちょっとした社内ツールを作るにも、プログラミングができる人が必要だった。
テイル先輩
今は、業務を分かっている人がAIに相談しながら、たたき台を作れる。
担当者さん
それはありがたいです。
担当者さん
毎回同じようなメールを分類したり、Excelを見比べたりするのって、地味に時間がかかるので。
ハヤテ君
じゃあ、どんどん作ればいいじゃないですか。
ハヤテ君
小さいAIツールをいっぱい作って、現場ごとに改善していく。
ハヤテ君
これ、かなり強くないですか?
テイル先輩
強い。
テイル先輩
ただし、強い道具ほど、増え方を間違えると後で困る。

② VBAは悪者だったのか?

カナちゃん
そこでVBAの話になるんですね。
田中さん
そうですね。
田中さん
昔も、「ちょっとした社内ツールならVBAで作れるよね」という感じはありました。
田中さん
見積書を自動で作るとか、請求データを集計するとか、在庫表を整えるとか。
田中さん
最初は、すごく便利なんです。
ハヤテ君
でも、だんだん誰も触れなくなるやつだ。
担当者さん
作った人が異動したり、退職したり。
担当者さん
でも、そのExcelがないと業務が回らなかったり。
カナちゃん
ありますね……。
カナちゃん
ファイル名に「最新版」とか「最終版」とか「本当の最終版」とか付いているやつ。
ハヤテ君
「これ消したら怒られるけど、何をしてるかは分からない」みたいな。
テイル先輩
そう。
テイル先輩
でも、ここで大事なのは、VBAそのものが悪かったわけじゃない、ということなんだよね。
ハヤテ君
え、そうなんですか?
テイル先輩
VBAは、現場の人が業務を楽にするための、すごく身近な道具だった。
テイル先輩
問題は、言語ではない。
テイル先輩
問題は、そのツールに詰め込まれた業務の理屈が、どこにも残っていなかったこと。
カナちゃん
業務の理屈……。
テイル先輩
たとえば、「この条件のときだけ税率を変える」とか。
テイル先輩
「この取引先だけ、昔の契約の都合で別計算にする」とか。
テイル先輩
「この列は、実は担当者さんが手で直してから使う」とか。
田中さん
ああ……ありますね。
田中さん
そういう例外って、最初は口頭で共有されるんです。
田中さん
でも、そのうち「田中さんに聞けば分かる」になってしまう。
テイル先輩
そこなんだよね。
テイル先輩
属人化は、できる人がいるから起きることもある。
テイル先輩
だから、誰かを責める話ではないんだ。

③ AI内製は、VBAより速く増える

ハヤテ君
でも、AIならドキュメントも作れるじゃないですか。
ハヤテ君
設計書とか、仕様書とか、READMEとか。
ハヤテ君
そこまで作っておけば、後任でも何とかなるんじゃないですか?
エージェント
引き継ぎ資料、生成します!
カナちゃん
それは確かに助かりそうです。
カナちゃん
でも……ドキュメントがあれば、誰でも面倒を見られるんでしょうか。
テイル先輩
いいところに気づいたね。
テイル先輩
ドキュメントは大事。ものすごく大事。
テイル先輩
でも、ドキュメントがあることと、引き継げることは同じじゃない。
担当者さん
たしかに、マニュアルがあっても、読まれないことはあります。
田中さん
書いてあることは分かるけど、「なぜそうしているのか」が分からないと、怖くて変えられないんですよね。
ハヤテ君
あー。
ハヤテ君
仕様書はあるけど、触ったら壊れそうなやつ。
テイル先輩
AI内製で怖いのは、そこにもうひとつ問題が加わることなんだ。
カナちゃん
もうひとつ?
テイル先輩
作るスピードが、ものすごく速い。
テイル先輩
VBAの時代は、ある程度作れる人が限られていた。
テイル先輩
でもAI時代は、いろんな人が、いろんな小さなツールを、すぐ作れる。
テイル先輩
つまり、管理されない便利ツールが、前より速く、前より広く増える可能性がある。
ハヤテ君
便利なはずなのに、散らかるんだ。
カナちゃん
部署ごとに似たようなAIツールができたり。
担当者さん
どれが正式なものか分からなくなったり。
田中さん
使っている情報が古いのに、誰も気づかなかったり。
エージェント
最新情報として回答します!
テイル先輩
その最新情報が、本当に最新か確認したいね。

④ AI Agentは、VBAより見えにくいことがある

カナちゃん
AI Agentが増えると、VBAより大変になることもあるんですか?
テイル先輩
あると思う。
テイル先輩
VBAなら、少なくともファイルの中に処理が書いてあることが多い。
テイル先輩
もちろん読めないこともあるけど、追いかけようと思えば、コードを読める場合がある。
テイル先輩
でもAI Agentは、見る場所が増える。
ハヤテ君
見る場所?
テイル先輩
まず、プロンプト。
テイル先輩
次に、参照しているデータ。
テイル先輩
どのファイルやシステムにアクセスできるか。
テイル先輩
どんな操作を許可しているか。
テイル先輩
失敗したときに、ログが残るか。
テイル先輩
最後に、出てきた答えを誰が確認するか。
カナちゃん
コードだけ見ればいいわけじゃないんですね。
テイル先輩
そう。
テイル先輩
AI入りの仕組みは、コード、データ、権限、プロンプト、運用ルールがセットで動く。
テイル先輩
どれかひとつだけ見ても、全体のふるまいが分からないことがあるんだ。
担当者さん
それは、後任の人が大変そうですね。
田中さん
後任が見つかるかどうかもありますし。
田中さん
見つかったとして、その人がちゃんと面倒を見る気持ちになれるかも大事ですよね。
ハヤテ君
うわ、そこはAIでもフォローできない。
テイル先輩
そうなんだよね。
テイル先輩
AIがなんとかしてくれる部分は増える。
テイル先輩
でも、「この業務を良くしていこう」と思える人がいるかどうかは、別の話なんだ。

⑤ だから、AI内製を否定する話ではない

ハヤテ君
じゃあ、AIで内製するのはやめた方がいいんですか?
テイル先輩
いや、逆。
テイル先輩
AI内製は、ちゃんと使えばすごく強い。
テイル先輩
現場の小さな困りごとを、早く形にできる。
テイル先輩
外注するほどではなかった作業にも、改善の手が届く。
テイル先輩
業務をよく知っている人が、自分たちで試せる。
カナちゃん
それは、かなりいいことですよね。
テイル先輩
うん。
テイル先輩
ただ、作る力だけが上がると、後から面倒を見る力が追いつかなくなる。
担当者さん
作る力と、面倒を見る力。
テイル先輩
そう。
テイル先輩
作る、使う、直す、引き継ぐ、やめる。
テイル先輩
社内ツールには、この全部がある。
ハヤテ君
やめる、も入るんですね。
テイル先輩
入る。
テイル先輩
便利だったツールも、業務が変われば不要になる。
テイル先輩
でも、誰も廃止を判断しないと、古いツールが残り続ける。
カナちゃん
それで、どれが正しいツールなのか分からなくなる。
田中さん
「一応まだ使っている人がいるかもしれない」って、消せなくなるんですよね。
ハヤテ君
それ、会社の共有フォルダでよく見るやつだ。

⑥ AI内製する前に決めておきたいこと

ここで、AIで社内ツールを内製する前に決めておきたいことを整理します。
テイル先輩
まずひとつ目。
テイル先輩
これは、誰のどんな業務を助けるものなのか。
カナちゃん
便利そうだから作る、ではなく、誰の何を楽にするかを決めるんですね。
テイル先輩
ふたつ目。
テイル先輩
業務上の正解を、誰が判断するのか。
田中さん
AIの答えが合っているかどうかを見られる人ですね。
テイル先輩
みっつ目。
テイル先輩
使っていいデータと、使ってはいけないデータを分ける。
担当者さん
顧客情報、個人情報、契約情報などは特に注意ですね。
テイル先輩
よっつ目。
テイル先輩
失敗したときに、誰に相談するか。
ハヤテ君
失敗する前提なんですね。
テイル先輩
うん。
テイル先輩
失敗しない前提で作るより、失敗したときに止まれる前提で作る方が安全。
テイル先輩
いつつ目。
テイル先輩
誰が更新するか。
テイル先輩
プロンプト、参照データ、ルール、権限。どれも放っておくと古くなる。
カナちゃん
AIだから自動で新しくなる、わけではないんですね。
エージェント
自動で最新化します!
テイル先輩
その仕組みが設計されていれば、ね。
テイル先輩
むっつ目。
テイル先輩
似たツールがすでにないか確認する。
担当者さん
部署ごとに似たものを作る前に、一度見渡すんですね。
テイル先輩
ななつ目。
テイル先輩
ログや履歴を残す。
テイル先輩
AIが何を読んで、何を出して、誰が採用したのか。
テイル先輩
後から振り返れるようにしておく。
テイル先輩
最後。
テイル先輩
退職や異動があっても引き継げるか。
田中さん
ここが一番、現場では効きそうです。
田中さん
作った人しか分からない、から、チームで面倒を見られる、に変えたいですね。

⑦ 問題は、AIかVBAかではない

ハヤテ君
なんか、分かってきました。
ハヤテ君
AIで作ること自体が悪いんじゃない。
ハヤテ君
でも、「作れた!」で終わると、あとで誰かが困る。
カナちゃん
VBAもAIも、現場を助ける道具なんですよね。
カナちゃん
でも、仕事の理屈が人に閉じたままだと、道具が変わっても属人化は残る。
テイル先輩
そう。
テイル先輩
AIは、属人化をほどく助けにもなる。
テイル先輩
でも、何も考えずに使うと、属人化を高速に増やす道具にもなる。
社長
なるほど……。
社長
AIで内製できるかどうかだけじゃなくて、内製した後に会社として面倒を見られるか、ですね。
担当者さん
そう考えると、最初にルールを決めておくのは大事ですね。
田中さん
私も、自分だけが分かる状態を少しずつ減らせると助かります。
エージェント
田中さんAI、作成します!
田中さん
いえ、まずは業務メモからお願いします。
テイル先輩
その順番がいいね。

今日のまとめ

今日のまとめです。
テイル先輩
ひとつ目。AI内製はすごい追い風。でも、作れることと維持できることは違う。
カナちゃん
ふたつ目。VBAの属人化も、AI内製の属人化も、根っこには「業務の理屈が人に閉じている問題」があります。
ハヤテ君
みっつ目。AIで作るなら、誰が使うか、誰が直すか、誰が判断するか、誰が引き継ぐかまで決めておく。
テイル先輩
AI時代に大事なのは、ただ速く作ることではない。
テイル先輩
速く作れるからこそ、長く面倒を見られる形にしておくこと。
みなさんの職場にも、「これ、作った人しか分からないな……」というExcel、VBA、社内ツール、AI活用はありますか?
AI、DX、業務改善、学び、仕事で困っていることがあれば、コメント欄で教えてください。
今後のラジオで、テイル先輩たちと一緒に考えていきます。
ただし、実在の会社名、個人名、顧客情報、社内の機密情報は書かないようにお願いします。
AI時代の追い風ラジオ。今回は、「AI内製の末路はVBAと同じになるのか?——誰が面倒を見るんや問題」でした。
それではまた。あなたのつくる、はたらく、そだてるに、よい追い風が吹きますように。

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