AI時代の追い風ラジオ。
この番組は、AIが当たり前になった時代に、つくる、はたらく、そだてる人の追い風になる話を、ゆるく、でも現場目線で考えていく番組です。
社長
うちも、そろそろAIを入れたいんですよ。
社長
全体的に効率化したくて。
社長
なんか、AIでこう、バーッと。
エージェント
バーッと、可能です!
担当者さん
……あの。
担当者さん
AIの前に、今の業務がちょっと限界でして。
田中さん
たぶん、その件は……私に聞かないと分からないですね。
ハヤテ君
じゃあ、AI田中さんを作れば解決っしょ!
エージェント
AI田中さん、起動します!
カナちゃん
……それ、田中さんがますます困りませんか?
テイル先輩
お、いいところに気づいたね。
テイル先輩
今日は、「AI導入より先に、業務をほどこう」という話をしてみよう。
① 「AIを入れたい」の奥にあるもの
第8回のテーマは、「AI導入より先に、業務をほどこう」。
今回から、法人向けの「はたらく」回に入っていきます。
ただし、難しいDX用語から入る回ではありません。
社長が「AIを入れたい」と言う。けれど、現場を見てみると、困りごとはAI以前にあった。そんな話です。
社長
最近、まわりでもAI導入ってよく聞くじゃないですか。
社長
うちも乗り遅れたくないんですよ。
社長
問い合わせ対応とか、書類作成とか、確認作業とか。
社長
AIで何とかなりませんか?
ハヤテ君
出た!AI導入!
ハヤテ君
チャットボット入れて、社内FAQ作って、全部自動化っしょ!
エージェント
全部自動化します!
カナちゃん
えっ、いきなり全部ですか?
テイル先輩
まあ、気持ちは分かる。
テイル先輩
社長も、会社を良くしたいんだよね。
社長
そうなんです。
社長
人も足りないですし、確認も多いですし。
社長
田中さんに聞かないと進まない仕事も増えてきていて。
田中さん
あの……増えてきたというか、だいぶ前からですね。
担当者さん
そうですね。
担当者さん
AIを入れたい、というより。
担当者さん
まず、どこを見れば正しいのか分からない状態を何とかしたいです。
② Excel、紙、口頭、田中さん
テイル先輩
じゃあ、少し現場を見てみようか。
テイル先輩
たとえば、問い合わせ対応は今どうなってます?
担当者さん
メールで来たものを、担当者ごとに振り分けています。
担当者さん
ただ、途中から電話で確認が入ったり、チャットで補足が来たりして。
担当者さん
最終的に、何が最新か分からなくなることがあります。
カナちゃん
ああ……メール、電話、チャットで情報が分かれるんですね。
担当者さん
はい。あと、管理表はExcelです。
ハヤテ君
Excelなら便利じゃん。
担当者さん
最初は便利なんです。
担当者さん
でも、部署ごとに別ファイルがあって。
担当者さん
「最新版」が、共有フォルダにも、誰かのデスクトップにもあります。
ハヤテ君
最新版が複数ある……?
田中さん
ええ。
田中さん
ただ、本当に見るべき最新版は、だいたい私のフォルダにあります。
カナちゃん
それ、田中さんがいないと分からないやつですね。
田中さん
そうですね。
田中さん
でも、私も好きで隠しているわけではなくて。
田中さん
その場その場で、例外対応していたら、そうなってしまったんです。
テイル先輩
ここ、大事だね。
テイル先輩
属人化は、誰かが悪いから起きるとは限らない。
テイル先輩
むしろ、できる人が頑張って、現場を止めないようにしてきた結果、起きることがある。
社長
そうか……。
社長
田中さんに頼りすぎていたんですね。
田中さん
頼られるのはありがたいんですが。
田中さん
そろそろ、私も休みやすくなると助かります。
③ AI田中さんで解決……ではない
ハヤテ君
じゃあやっぱり、AI田中さんじゃない?
ハヤテ君
田中さんの知識を全部AIに入れて、みんながAIに聞けるようにする。
ハヤテ君
これで属人化解消っしょ!
エージェント
田中さんの脳内、同期します!
田中さん
それは……少し怖いですね。
カナちゃん
それに、田中さんの知識って、ファイルに全部書いてあるわけじゃないですよね。
田中さん
はい。
田中さん
「A社さんだけはこの形式」とか。
田中さん
「この確認は、繁忙期だけ省略していい」とか。
田中さん
「この紙は、実はあとで集計に使う」とか。
田中さん
そういう細かい事情が多いです。
ハヤテ君
あー……AIに入れる前に、そもそも整理が必要なのか。
テイル先輩
そう。
テイル先輩
AIに聞けるようにする前に、まず「何が正しい情報なのか」を決める必要がある。
テイル先輩
古いExcel、紙のメモ、口頭ルール、担当者の記憶。
テイル先輩
これらが絡まったままAIを入れると、AIは絡まったまま答える。
エージェント
絡まったまま、完璧です!
ハヤテ君
それは完璧じゃない!
カナちゃん
AIが悪いというより、渡す情報がほどけていないんですね。
テイル先輩
まさにそれ。
④ 業務をほどく、という考え方
社長
でも、「業務をほどく」って、具体的には何をするんですか?
テイル先輩
いい質問です。
テイル先輩
難しく言うと、業務フローの見える化とか、業務棚卸しとか言うんだけど。
テイル先輩
もっと簡単に言うと、「誰が、何を見て、何を判断しているか」を並べること。
カナちゃん
誰が。
ハヤテ君
何を見て。
担当者さん
何を判断しているか。
テイル先輩
そう。
テイル先輩
たとえば問い合わせ対応なら、こう分けてみる。
テイル先輩
問い合わせは、どこから来る?
担当者さん
メール、電話、チャットです。
テイル先輩
誰が受ける?
担当者さん
最初は私です。内容によって各担当に振ります。
テイル先輩
何を見て判断する?
担当者さん
過去の対応履歴と、Excelの管理表と、田中さんのメモです。
テイル先輩
そこで止まりやすい場所は?
担当者さん
担当者に確認している間と、田中さんに聞かないと分からない例外処理です。
テイル先輩
いいですね。
テイル先輩
ここまで出ると、AIを入れる場所より先に、整える場所が見えてくる。
ハヤテ君
たとえば?
テイル先輩
まず、問い合わせを一か所に集める。
テイル先輩
対応状況を見えるようにする。
テイル先輩
よくある質問を整理する。
テイル先輩
例外処理を、田中さんの頭の中から外に出す。
テイル先輩
そのうえで、AIに返信案を作らせたり、FAQ候補を出させたりする。
カナちゃん
いきなり自動返信じゃないんですね。
テイル先輩
うん。最初からお客さんに直接返すより、まずは人間の下書きを助けてもらう方が安全なことが多い。
⑤ AIは主役ではなく、追い風
社長
なるほど。
社長
じゃあ、AI導入はまだ早いということですか?
テイル先輩
早い、というより。
テイル先輩
AIだけを先に選ぶと、ズレやすいんです。
ハヤテ君
ツール選びから入っちゃダメ?
テイル先輩
ツール選びも大事。
テイル先輩
でもその前に、「何を楽にしたいのか」「何を間違えると困るのか」「誰が最終判断するのか」を見たい。
カナちゃん
たしかに。
カナちゃん
問い合わせ対応でも、全部自動化したいのか、返信案がほしいのか、FAQを整理したいのかで、必要なものが違いますね。
担当者さん
現場としては、まず確認する場所をひとつにしたいです。
担当者さん
そのうえで、よくある回答の下書きをAIが作ってくれたら助かります。
田中さん
私としては、例外処理を少しずつメモに残して、みんなで見られる形にしたいです。
田中さん
その整理を手伝ってくれるなら、AIはありがたいですね。
ハヤテ君
あ、AIが田中さんの代わりになるんじゃなくて。
ハヤテ君
田中さんが抱えてたものを、みんなで使える形にする手伝いをするんだ。
テイル先輩
そうそう。
テイル先輩
AIは主役じゃない。
テイル先輩
主役は、業務を良くしたい人たち。
テイル先輩
AIは、その整理を進める追い風なんだよね。
⑥ 最初の一歩は、困りごとメモ
社長
では、最初に何から始めるのがいいですか?
テイル先輩
まずは、大きなDX計画を作る前に。
テイル先輩
社内の困りごとメモを集めるのがいいです。
ハヤテ君
困りごとメモ?
テイル先輩
たとえば、こんな感じ。
テイル先輩
「最新版のExcelが分からない」
テイル先輩
「同じ内容を何度も転記している」
テイル先輩
「確認が口頭で流れてしまう」
テイル先輩
「田中さんが休むと止まる」
テイル先輩
「問い合わせの対応状況が分からない」
カナちゃん
それなら、現場の人も書きやすそうです。
テイル先輩
うん。
テイル先輩
いきなり「AIで何ができますか?」と聞くより。
テイル先輩
「何に毎日困っていますか?」と聞く方が、いい入口になる。
担当者さん
その困りごとを見ながら、AIでできること、システム化すること、やめることを分けるんですね。
テイル先輩
そう。
テイル先輩
全部をAIにする必要はない。
テイル先輩
入力フォームにするだけで楽になることもある。
テイル先輩
Excelを一つの管理画面にまとめるだけで、確認が減ることもある。
テイル先輩
紙の申請をデジタル化する前に、承認の流れを見直すだけで改善することもある。
ハヤテ君
AIじゃない解決も、普通にあるんだな。
テイル先輩
あるある。
テイル先輩
そして、業務がほどけてくると、AIを使う場所も見えてくる。
⑦ AIに入れていい情報、ダメな情報
カナちゃん
ひとつ気になったんですけど。
カナちゃん
田中さんのメモとか、問い合わせ履歴って、AIにそのまま入れていいんですか?
テイル先輩
そこは、とても大事。
テイル先輩
実在の顧客名、個人情報、契約内容、社外秘の情報。
テイル先輩
こういうものは、扱いに注意が必要です。
エージェント
全部読み込めば、完璧です!
テイル先輩
それは、完璧に危ないことがある。
ハヤテ君
完璧に危ない。
テイル先輩
AIに何を渡していいか。
テイル先輩
どこまで自動化していいか。
テイル先輩
最後は誰が確認するか。
テイル先輩
このルールも、業務をほどく中で一緒に決めていく必要がある。
今日のまとめ
今日のまとめです。
テイル先輩
ひとつ目。「AIを入れたい」という相談の奥には、属人化、Excel増殖、紙と口頭、確認作業の多さが隠れていることがある。
カナちゃん
ふたつ目。AIに聞けるようにする前に、「誰が、何を見て、何を判断しているか」を見えるようにする。
ハヤテ君
みっつ目。AIは田中さんの代わりじゃなくて、田中さんが抱えてきた知識を、みんなで使える形にする追い風。
田中さん
それなら、私も助かります。
担当者さん
現場としても、まずは困りごとを出すところからなら始められそうです。
社長
AIを入れる前に、業務をほどく。
社長
なるほど。こっちの方が、ちゃんと会社が良くなりそうですね。
エージェント
業務ほどき、開始します!
テイル先輩
うん。今日はそれで合ってる。
テイル先輩
AI導入は、ゴールじゃない。
テイル先輩
会社の中で絡まっている仕事をほどいて、必要なところに、必要な道具を当てていく。
テイル先輩
その道具のひとつとしてAIがある。
テイル先輩
そう考えると、AIは怖い流行りものではなく、現場を少し楽にする追い風になるんだよね。
AI時代の追い風ラジオ。第8回は、「AI導入より先に、業務をほどこう」でした。
この回の台本と、業務をほどくための困りごとメモの例は、概要欄のページにまとめています。
それではまた。あなたのつくる、はたらく、そだてるに、よい追い風が吹きますように。