生産計画Excelを直すたびに電話が増える会社へ|最新版が共有されない本当の原因
製造現場で生産計画をExcel管理していると、こんなことが起きます。
「この案件、今日じゃなくて明日にずれたよ」
「設備が止まったから順番を変えて」
「営業から納期前倒しの連絡が来た」
「この製品はまだ着手していません」
こうした変更が入るたびに、生産計画表を修正して、現場に伝えて、営業にも連絡して、場合によってはPDFを送り直す。
それでも翌日になると、
「どれが最新版ですか?」
「昨日もらった工程表と違うんですが」
「この案件、今日やるんじゃなかったですか?」
という確認が発生する。
もしこうしたやり取りが頻繁に起きているなら、問題はExcelの操作方法ではありません。
生産計画が“ファイル”として管理されていて、変更情報そのものが共有されていないことが原因かもしれません。
この記事では、なぜ生産計画をExcelで管理すると変更時の連絡が増えるのか、どのように改善すればよいのかを整理します。
生産計画は「一度作って終わり」の表ではない
生産計画というと、
- 何を
- いつ
- どの設備で
- 何個作るか
を決める表というイメージがあります。
しかし実際には、計画通りに進む日の方が少ない会社もあります。
たとえば、
- 急な追加受注
- 納期前倒し
- 材料未入荷
- 設備故障
- 不良発生
- 担当者の欠勤
- 外注先の遅れ
などで、予定は頻繁に変わります。
つまり生産計画は、完成した資料ではなく、毎日変わり続ける情報です。
ここに、Excelとの相性問題があります。
Excelは表を作るには非常に便利です。
しかし、
「変更されたことを関係者全員へ即座に知らせる」
という用途は得意ではありません。
よくある状態:Excelを直したあとに人が知らせている
たとえば生産管理担当者が工程表を修正したとします。
変更内容は、
「製品Aを午前から午後へ移動」
です。
Excel上では数秒で直せます。
しかし、その後には、
- 現場責任者へ電話
- 営業へチャット
- 印刷した工程表を差し替え
- PDFをメール送付
- 班長へ口頭説明
といった作業が発生します。
つまり、Excelを直すことよりも、
直したことを周囲へ伝える作業
の方に時間がかかっています。
この状態では、計画変更が増えるほど、電話や確認も増えていきます。
問題1:同じ工程表が複数の場所に存在する
生産現場では、工程表が一つとは限りません。
たとえば、
- 生産管理担当者のPC
- 現場に印刷された紙
- 営業へ送ったPDF
- 共有フォルダ内のExcel
- チャットに添付されたファイル
などです。
元は同じExcelでも、一度配布した瞬間からコピーが増えます。
すると、
「どれが正しい情報なのか」
が分かりにくくなります。
昨日印刷した工程表を見ている人と、今朝更新したExcelを見ている人が同時に存在する。
これが、
「聞いていた話と違う」
という状況を生みます。
問題2:「変更前」と「変更後」が分かりにくい
Excelを更新すると、基本的には現在の状態が表示されます。
たとえば、
昨日まで、
製品A:10時開始
だったものを、
製品A:14時開始
へ変更すると、表上は14時開始になります。
しかし現場からすると、
「何が変わったのか」
が重要です。
- 新しい案件が追加された
- 開始時間が変わった
- 担当設備が変わった
- 納期が前倒しになった
といった差分が分からないと、表を毎回見比べなければなりません。
その結果、
「何か変わりました?」
という確認が増えます。
問題3:生産計画と実際の進捗が別になっている
さらに多いのが、
計画はExcel、進捗確認は電話
という状態です。
工程表を見ると、
「製品B 加工中」
の予定。
しかし本当に加工中なのかは分からない。
そこで、
「Bって今どこまで進んでる?」
と現場へ電話します。
現場から、
「まだ前の仕事が終わってません」
と言われる。
するとExcelを修正する。
そして営業へ連絡する。
このように、
Excelで予定を見る
↓
電話で実績を確認
↓
Excelを直す
↓
他部署へ連絡
という流れになります。
本来は、生産計画と進捗が同じ場所で見える方が自然です。
問題4:営業が「今の状況」を直接確認できない
営業から生産管理へ、
「この案件、いつ出荷できますか?」
という問い合わせが何度も来ていないでしょうか。
営業が工程表を持っていても、古い可能性があります。
そのため結局、
営業
↓
生産管理
↓
現場
と確認が必要になります。
生産管理担当者が、単なる情報の中継地点になってしまいます。
この状態では、案件が増えるほど問い合わせも比例して増えます。
問題5:工程表を作れる人が限られている
生産計画Excelは、長年使っているうちに複雑になりがちです。
- セル結合
- 条件付き書式
- マクロ
- 複雑な関数
- 色分けルール
- 独自記号
などが増える。
結果として、
「このExcelは○○さんしか触れない」
という状態になります。
そしてその担当者が、
- 計画作成
- 変更
- 現場確認
- 営業への回答
を全部引き受けることになります。
これでは、本人が休んだだけでも業務が止まりやすくなります。
Excelの工程表が悪いわけではない
ここでも重要なのは、
「Excelを使っているからダメ」
という話ではありません。
たとえば、
- 設備が少ない
- 製品種類も少ない
- 計画変更が少ない
- 関係者が数人
- 同じ場所で働いている
という会社なら、Excel工程表は十分機能します。
問題になるのは、
- 案件が増えた
- 計画変更が多い
- 営業と工場が離れている
- 設備が増えた
- 複数班が存在する
にもかかわらず、
「Excelを配る」運用のまま
になっているケースです。
改善のポイントは「工程表をきれいにすること」ではない
Excelの見た目を改善したり、
関数を増やしたり、
マクロで自動化したりすることもできます。
しかし、
「最新版が共有されない」
という問題は、それだけでは解決しません。
必要なのは、
全員が同じ情報を見る状態
にすることです。
たとえばWeb上に、
- 今日の生産予定
- 設備ごとの予定
- 案件の進捗
- 遅延案件
- 変更内容
を表示します。
営業も現場も生産管理も、同じ画面を見る。
こうすると、
「最新版を送る」
という作業自体が不要になります。
大規模な生産管理システムでなくても改善できる
ここで、
「それなら生産管理システムを入れないといけないのか」
と思うかもしれません。
必ずしもそうではありません。
中小製造業の場合、
まずは、
- 案件名
- 製品名
- 数量
- 設備
- 担当
- 開始予定
- 完了予定
- ステータス
くらいを共有するだけでも効果があります。
画面としては、
製造進捗ボード
のようなシンプルなものでも構いません。
たとえば、
未着手
↓
準備中
↓
加工中
↓
検査中
↓
完成
↓
出荷
という状態を画面上で動かせるようにする。
現場が「加工中」へ変えれば、生産管理にも営業にも同じ情報が表示されます。
これだけでも、
「今どこまで進んでいますか?」
という問い合わせはかなり減らせます。
まずはExcelを捨てなくてもいい
既存の生産計画Excelがうまく機能している部分まで、すべて変える必要はありません。
たとえば、
月間計画はExcel。
一方で、
今日・今週の進捗だけWebで共有する
という方法もあります。
あるいは、
Excelからデータを取り込んで、関係者が見る画面だけWeb化することもできます。
重要なのは、
「Excelかシステムか」
の二択にしないことです。
今困っている部分だけを切り出した方が、現場への影響も小さくなります。
こんな状態なら見直しを検討するタイミング
次の項目に複数当てはまる場合は、生産計画の管理方法を見直す価値があります。
- 工程変更のたびに電話している
- PDFの工程表を何度も送り直している
- 現場に古い工程表が残っている
- 営業から進捗確認が頻繁に来る
- 「最新版どれ?」という会話がある
- 設備故障のたびに予定を全部組み直す
- 計画と実績が別管理
- 生産計画を触れる人が1人しかいない
- 現場の進捗を電話で確認している
- Excelを開かないと状況が分からない
もしこうした状態になっているなら、
問題はExcelの関数不足ではなく、
情報共有の仕組みそのもの
かもしれません。
生産計画で本当に必要なのは「今どうなっているか」
生産計画の目的は、きれいな工程表を作ることではありません。
本当に知りたいのは、
- 今日何を作るのか
- 今どこまで進んでいるのか
- 何が遅れているのか
- 予定が変わったのか
- 納期に間に合うのか
ということです。
それが関係者全員に共有されていれば、
電話や確認作業は大きく減らせます。
もし、
「Excelを直すたびに周囲への連絡が増える」
という状態になっているなら、
工程表をさらに複雑にする前に、
“同じ最新情報を見る仕組み”
へ変えることを検討してみてもよいかもしれません。
今使っている生産計画Excelから改善方法を整理できます
「生産管理システムを入れるほどではない」
「今の工程表はできれば残したい」
「どこだけWeb化すれば効果が出るのか分からない」
という場合でも、現在使っているExcelや実際の運用を確認しながら、
- Excelのままでよい部分
- 共有方法だけ変えた方がよい部分
- システム化すると効果が出やすい部分
を整理できます。
大規模なシステム導入を前提とせず、今の生産計画を活かしながら小さく改善する方法から検討できます。
生産計画の変更連絡や進捗確認に時間がかかっている場合は、まず現在の運用からご相談ください。