AI活用は「業務の棚卸し」から始めよう。中小企業でもできるシンプルな整理方法
生成AIやAIエージェントの話題が増え、「自社でも何か使えないか」と考える企業はかなり増えてきました。
一方で、実際に導入を考え始めると、
- 何に使えばいいのかわからない
- ChatGPTは触っているが、業務改善にはつながっていない
- AIでできることが多すぎて、どこから手をつければいいかわからない
- 自動化したい業務はあるが、AIが必要なのかシステム化が必要なのかわからない
といった壁にぶつかります。
こうしたとき、最初から「どのAIを導入するか」を考える必要はありません。
むしろ最初にやるべきなのは、今の業務を棚卸しすることです。
この記事では、中小企業でも取り組みやすい、シンプルな業務棚卸しの方法を紹介します。
AIから考えない
AI活用を検討するときに、ありがちなのが、
ChatGPTを導入した。さて、何に使おう?
という進め方です。
もちろん、実際に触ってみることは大切です。
ただ、会社全体の業務改善を考える場合は、順番を逆にした方がうまくいきます。
今の仕事を整理する
↓
時間がかかっている業務を見つける
↓
何に困っているかを整理する
↓
どうなれば理想かを考える
↓
その実現方法としてAIやITを検討する
つまり、
AIありきではなく、業務課題から考える
ということです。
業務棚卸しは4つの項目だけでいい
業務改善というと、難しいフレームワークや業務フロー図を作る必要があるように感じるかもしれません。
しかし、最初の棚卸しであれば、次の4項目だけでも十分です。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 業務内容 | 普段どんな仕事をしているか |
| かかっている時間 | どのくらい時間を使っているか |
| 苦労していること | 何が面倒・大変なのか |
| どうなったらいいか | 理想の状態は何か |
この4つを、普段の業務について書き出していきます。
1. 業務内容を書く
最初は、普段行っている業務を書き出します。
ここでのポイントは、「営業」「受注管理」といった大きな単位ではなく、実際に人が行っている作業まで具体化することです。
例えば、
少し大きすぎる例
受注管理
ではなく、
具体的な例
FAXで届いた注文書を確認して、商品名や数量をExcelへ入力する
と書きます。
さらに、
Excelへ入力した内容を販売管理システムにも入力する
という作業があるなら、こちらも別の業務として整理できます。
「人が何をしているのか」が想像できるくらいまで分解すると、改善ポイントを見つけやすくなります。
2. どのくらい時間がかかっているか
次に、その業務にどれくらい時間を使っているかを確認します。
例えば、
- 1回5分
- 1日20件
- 毎週2時間
- 月末に丸1日
- 3人で対応している
といった形です。
厳密な計測をする必要はありません。
最初は感覚でも構いません。
ただし、
なんとなく大変
ではなく、
月に20時間くらい使っている
まで見えると、業務改善の優先順位がぐっと判断しやすくなります。
例えば、
1件3分
×
1日30件
×
月20営業日
=
月30時間
となれば、「ここを改善すると効果が大きそうだ」と分かります。
3. どこに苦労しているか
次に、その業務の何が大変なのかを書きます。
ここでは、専門用語を使う必要はありません。
普段感じていることを、そのまま書けば十分です。
例えば、
- 毎回同じ内容を入力している
- 転記ミスが起きる
- ダブルチェックが必要
- Excelが複雑になっている
- 過去資料を探すのに時間がかかる
- どこに保存したかわからない
- 担当者しかやり方を知らない
- 毎回似たメールを書いている
- 問い合わせへの回答を毎回調べている
- 複数システムに同じ情報を入力している
- 月末だけ作業が集中する
- 毎朝同じサイトを確認している
といった内容です。
こうした「日常の小さな面倒」の中に、AIやITによる改善候補が隠れています。
4. 「どうなったらいいか」を考える
4つの中で、特に重要なのがこの項目です。
ここでは、
AIで自動化したい
とは書かないようにします。
AIは目的ではなく、あくまで手段だからです。
例えば、
現在
FAX注文を人がExcelへ入力している
苦労
入力に時間がかかる。数字の入力ミスもある。
理想
注文内容が自動で入力され、人は間違いがないか確認するだけにしたい
ここまで整理できれば、その後に、
- OCRを使う
- AIで項目を抽出する
- 販売管理システムと連携する
といった具体策を考えられます。
具体策は最後に考える
業務棚卸しの段階では、無理にAIの知識を使う必要はありません。
まず、
何をしているか
↓
どれくらい時間がかかるか
↓
何が困っているか
↓
どうなればよいか
まで整理します。
その後に初めて、
どうやって実現するか?
を考えます。
例えば、
紙やFAXからの入力が大変
→ OCR、Document AI
過去資料を探すのが大変
→ 検索システム、RAG、ナレッジ共有
同じ文章を何度も作っている
→ ChatGPT、Claudeなどの生成AI
Excel集計に時間がかかる
→ データ統合、BI、システム化
システム間の転記が多い
→ API連携、RPA、Workflow
複数の処理をまとめて任せたい
→ AI Agent、独自業務システム
というようにつながります。
AIを使わない方がよい場合もある
ここも重要です。
業務を棚卸しした結果、
これはAIではなく、Excelの作り方を変えるだけで解決できる
という場合もあります。
あるいは、
APIでシステム同士をつなげばよい
という場合もあります。
さらに、
そもそもこの作業をやめても問題ない
ということもあります。
AI活用で大切なのは、
何でもAIにすることではありません。
課題に対して、一番シンプルで効果的な方法を選ぶことです。
業務棚卸しの例
例えば、次のように整理できます。
| 業務内容 | 時間 | 苦労していること | どうなったらいいか |
|---|---|---|---|
| FAX注文をExcelへ入力 | 月30時間 | 転記が大変、ミス | 自動入力して確認だけにしたい |
| 月次Excel集計 | 月8時間 | 各部署の形式が違う | 自動で集計したい |
| 過去案件を探す | 1回15分 | 保存場所がバラバラ | すぐ検索したい |
| 問い合わせ返信 | 毎日1時間 | 同じ回答を何度も作る | 回答案を自動作成したい |
| システム間の転記 | 毎日2時間 | 二重入力 | 一度入力すれば自動反映したい |
これだけでも、改善候補がかなり見えてきます。
最初は3〜5業務だけでいい
いきなり会社全体の業務を完全に整理しようとすると、大変です。
まずは、
最近「面倒だな」と感じた仕事を3〜5個
くらいから始めれば十分です。
特に、
- 毎日繰り返している
- 毎月必ず発生する
- 人数が多い
- 時間がかかる
- 転記が多い
- 探す時間が長い
- ミスが発生しやすい
業務から見ると、改善効果が出やすくなります。
AI活用の第一歩は、自社の仕事を見ること
生成AI、AIエージェント、RAG、OCR、RPAなど、現在はさまざまな技術があります。
できることが増えたからこそ、
どの技術を使えばいいのかわからない
という状況にもなりやすくなっています。
そんなときは、AIから考える必要はありません。
まず、
- 何の仕事をしているか
- どのくらい時間がかかっているか
- 何に苦労しているか
- どうなったらいいか
を整理してみてください。
その理想状態を実現するための手段として、
- 生成AI
- OCR
- RAG
- RPA
- API連携
- システム化
- AIエージェント
などを選べばよいのです。
AI活用は、AIから考えない。まず自社の業務を見る。
これが、無理なくAI・IT活用を始めるための第一歩です。