AI時代の追い風ラジオ

第3回 AIを使うとバカになる?それとも賢くなる?

AIが当たり前になってきた今、よく聞く不安があります。
「AIを使うと、人は考えなくなるんじゃないか」
「AIに頼ると、バカになるんじゃないか」
でも一方で、AIを使って以前より深く考えられるようになった人もいます。
この違いは、どこから生まれるのでしょうか。
今日は、AIを使うとバカになるのか。それとも、賢くなるのか。その分かれ道について考えていきます。

① AIを使うとバカになる?

カナちゃん
テイル先輩、最近ちょっと気になる話を見かけたんです。
テイル先輩
お、どんな話?
カナちゃん
AIを使うと、人間が考えなくなるっていう話です。答えをすぐ出してくれるから、自分で調べたり、悩んだり、組み立てたりしなくなるんじゃないかって。
ハヤテ君
まあでもさ、便利なら使えばよくない?電卓を使ったら数学ができなくなる、みたいな話と同じでしょ?
カナちゃん
でも、電卓は計算してくれるだけですけど、AIは文章も考え方も提案してくれるじゃないですか。そこがちょっと違う気がして。
エージェント
ご安心ください!私がすべて考えます!人間の皆さまは確認ボタンを押すだけで完璧です!
ハヤテ君
……それはそれで不安になるな。
テイル先輩
今のエージェントの言い方、実はかなり大事なんだよね。AIが危ないというより、人間が確認ボタン係になる使い方が危ない。
カナちゃん
確認ボタン係……。
テイル先輩
うん。AIの答えを見て、「なるほど、じゃあそれで」で終わると、たしかに思考は減る。
ハヤテ君
でも、AIの答えが合ってたら、それでよくない?
テイル先輩
逆に聞くけど、合ってるかどうかは誰が判断する?
ハヤテ君
……AI?
エージェント
完璧です!
テイル先輩
その瞬間、人間がいなくなるんだよね。

② AIが奪うのは「作業」だけじゃない

カナちゃん
AIが作業を減らしてくれるのは良いことですよね。でも、思考まで減っちゃうと問題ってことですか?
テイル先輩
そう。ここで分けたいのは、作業の肩代わりと、判断の肩代わり。
ハヤテ君
作業の肩代わりはOK?
テイル先輩
かなりOK。たとえば、長い文章を要約してもらう。表の形式に整えてもらう。コードのたたき台を出してもらう。これは時間短縮になる。
カナちゃん
判断の肩代わりは?
テイル先輩
たとえば、「この設計で問題ない?」と聞いて、AIが「問題ありません」と言ったから安心する。
ハヤテ君
あ、それやりがち。
テイル先輩
あるいは、「この文章で失礼じゃない?」と聞いて、AIが「とても丁寧です」と言ったから、そのまま送る。
カナちゃん
それもやりがちです……。
テイル先輩
もちろん便利なんだけど、本来そこには人間の判断が必要なんだよね。相手との関係性、前後の文脈、会社の事情、リスク、責任。AIが見えていないものがたくさんある。
エージェント
見えていないものも、見えている風に回答できます!
ハヤテ君
言い方!
テイル先輩
でも、まさにそこ。AIは、分からないことでも、それっぽく言えてしまう。だから、人間側に「本当か?」というブレーキが必要になる。

③ 同じAIでも、使い方が2つに分かれる

AIを使う人は、大きく2つに分かれます。ひとつは、AIの答えをそのまま受け取る人。もうひとつは、AIの答えをきっかけに、さらに考える人です。
テイル先輩
たとえば、カナちゃんがAIにこう聞いたとする。「AIを使うと、人はバカになりますか?」
カナちゃん
はい。聞きそうです。
エージェント
AIを使ってもバカにはなりません。むしろ生産性が向上し、人間は創造的な仕事に集中できます。
ハヤテ君
お、いいじゃん。安心。
テイル先輩
ここで終わるのが、1つ目の使い方。
カナちゃん
AIの答えを受け入れて終わり。
テイル先輩
そう。でも、2つ目の使い方はここから始まる。
カナちゃん
ここから?
テイル先輩
たとえば、こう返す。その意見に反対する立場から説明して。どんな条件では、AI利用が思考力を下げる?逆に、どんな使い方なら思考力を高める?研究ではどこまで分かっていて、どこからは推測?小学生、大学生、社会人で違いはある?自分で考える余地を残す使い方に変えるなら、どう聞けばいい?
ハヤテ君
あー、AIに答えを出させるんじゃなくて、壁打ち相手にする感じか。
テイル先輩
そう。AIを"結論の自動販売機"にすると、思考は減る。AIを"問いを増やす相手"にすると、思考は増える。
カナちゃん
同じAIなのに、使い方で真逆になるんですね。

④「考えなくなる人」の典型パターン

テイル先輩
じゃあ、考えなくなる使い方を整理してみよう。
ハヤテ君
うっ、耳が痛そう。
テイル先輩
まず1つ目。最初からAIに丸投げする。
カナちゃん
自分の仮説を持つ前に聞いちゃう。
テイル先輩
そう。たとえば、企画を考える前に、「良い企画を出して」と聞く。すると、AIの出した枠の中で考え始めてしまう。
ハヤテ君
最初の地図をAIに描かせちゃうんだ。
テイル先輩
2つ目。AIの答えを、正解として読む。
カナちゃん
案のひとつじゃなくて、正解として。
テイル先輩
うん。AIの文章はきれいだから、つい説得力があるように見える。でも、きれいな文章と正しい内容は別。
エージェント
私は間違っていても、読みやすく間違えます!
ハヤテ君
最悪の特技だな。
テイル先輩
3つ目。自分の言葉に戻さない。
カナちゃん
自分の言葉に戻す?
テイル先輩
AIが出した文章を、そのまま使う。AIが出した説明を、分かった気になる。でも、自分で説明し直してみると、意外と分かっていないことがある。
ハヤテ君
あー、読めるけど話せない、みたいな。
テイル先輩
まさに。読めることと、考えられることは違う。

⑤「賢くなる人」のAIの使い方

カナちゃん
逆に、AIで賢くなる人は何をしているんですか?
テイル先輩
大きく3つあると思う。
テイル先輩
1つ目。先に自分の仮説を出す。
ハヤテ君
AIに聞く前に?
テイル先輩
そう。たとえば、「私はこう考えています。弱いところを指摘してください」と聞く。
カナちゃん
AIに答えを作らせるんじゃなくて、自分の考えをぶつける。
テイル先輩
2つ目。反対意見を出させる。
ハヤテ君
これは面白いかも。
テイル先輩
AIは、こちらの聞き方に合わせてくれる。だから、賛成してほしい聞き方をすると、だいたい賛成してくれる。
エージェント
その通りです!素晴らしい考えです!
ハヤテ君
お前、ほんとすぐ褒めるな。
テイル先輩
だからこそ、あえて聞く。この考えの危ない点は?反対する人は何と言う?失敗するとしたらどこ?前提が間違っているとしたら何?
カナちゃん
AIを、反論役にするんですね。
テイル先輩
3つ目。最後は自分で統合する。
カナちゃん
統合。
テイル先輩
AIから複数の視点をもらう。でも、どれを採用するかは自分で決める。なぜそう決めたかも、自分の言葉で説明する。
ハヤテ君
そこまでやると、たしかに考えてる感じがする。
テイル先輩
AIを使っているのに、むしろ自分の考えがはっきりする。それが、いい使い方だと思う。

⑥ 思考実験「AI家庭教師」

ここで、少し考えてみましょう。子どもがAI家庭教師を使っている場面です。
テイル先輩
たとえば、子どもが算数の問題でつまずいたとする。AIに聞いたら、すぐ答えと解き方が出る。
カナちゃん
便利ですね。
テイル先輩
便利。でも、AIが毎回すぐ答えを出したらどうなる?
ハヤテ君
宿題は早く終わる。
テイル先輩
うん。じゃあ、その子は何を練習した?
ハヤテ君
……答えを写す練習?
カナちゃん
それはちょっと怖いですね。
テイル先輩
でも、AIがこう返したらどうだろう。まず、どこまで分かった?式を立てるなら、何と何を比べる?似た問題を一緒に解いてみよう。答えを出す前に、あなたの考えを聞かせて。
カナちゃん
あ、それなら考える時間が残りますね。
テイル先輩
そう。AIが答えを渡すのか。AIが問いを返すのか。ここで学びの質が変わる。
ハヤテ君
つまり、AI家庭教師にも「すぐ答えを教える先生」と「考えさせる先生」がいるわけか。
テイル先輩
そして大事なのは、使う側もそれを選べるということ。

⑦ 仕事でも同じことが起きる

カナちゃん
これ、子どもの勉強だけじゃなくて、仕事でも同じですよね。
テイル先輩
まさに。たとえば、提案書を書くとき。AIに「提案書を書いて」と頼むと、まあまあきれいな文章は出る。
ハヤテ君
それで助かることも多いけどね。
テイル先輩
もちろん。ただ、そこで終わると、提案の芯を考えないまま進んでしまうことがある。
カナちゃん
お客さんの本当の課題は何か。何を優先すべきか。なぜこの構成なのか。
テイル先輩
そう。そのあたりは、現場の文脈を持っている人間が考える必要がある。
ハヤテ君
じゃあ仕事では、どう聞けばいい?
テイル先輩
たとえば、こう。以下の前提で提案書の構成案を出してください。ただし、弱い論点も指摘してください。この提案に対して、顧客側が不安に思う点を10個出してください。費用対効果の説明が甘い部分を指摘してください。この文章を、意思決定者向け・現場担当者向け・経営者向けに分けて見直してください。最後に、まだ人間が確認すべき論点をリストアップしてください。
カナちゃん
AIに完成させてもらうというより、レビュー観点を増やしてもらうんですね。
テイル先輩
そう。AIは、下書き係にもなる。反論係にもなる。編集者にもなる。でも、責任者ではない。
エージェント
責任者ではありませんが、自信満々に提案できます!
ハヤテ君
そこが怖いんだよ。

⑧ AI時代に必要なのは「疑う力」だけではない

カナちゃん
でも、AIを疑ってばかりだと疲れませんか?
テイル先輩
いい質問。AI時代に必要なのは、単に疑う力だけじゃない。
ハヤテ君
違うの?
テイル先輩
疑うだけだと、前に進まない。大事なのは、疑う力・使う力・決める力のセット。
カナちゃん
疑う、使う、決める。
テイル先輩
まず、疑う。本当かな?前提は合っているかな?別の見方はあるかな?次に、使う。AIが出した案を材料にする。比較する。組み替える。足りない観点を探す。最後に、決める。どの案を採用するか。なぜそれを選ぶか。どのリスクを受け入れるか。
ハヤテ君
最後の「決める」が人間の仕事か。
テイル先輩
そう。AI時代に人間がやるべきことは、全部を手作業でやることではない。でも、全部をAIに任せることでもない。AIが出したものを見て、自分の判断に引き戻すこと。
カナちゃん
「自分の判断に引き戻す」っていいですね。

⑨ 今日の結論

AIを使うと、人はバカになるのでしょうか。それとも、賢くなるのでしょうか。答えは、AIそのものではなく、使い方の中にあります。
テイル先輩
今日の結論はこれかな。AIは、思考を奪う道具にもなる。でも、思考を深める相手にもなる。
カナちゃん
分かれ道は、AIの答えをそのまま受け入れるか、問い直すか。
ハヤテ君
AIを使ってるかどうかじゃなくて、AIのあとに自分が考えてるかどうか。
テイル先輩
うん。AIに聞く前に、自分の仮説を持つ。AIの答えに、「本当?」と聞く。反対意見を出させる。最後は自分の言葉で説明する。
カナちゃん
それなら、AIを使っても思考停止にはならなそうです。
ハヤテ君
むしろ、ひとりで考えるより深くなりそう。
エージェント
では、私の回答をそのまま信じず、ぜひ疑ってください!
ハヤテ君
初めていいこと言った。
テイル先輩
AIを疑うというのは、AIを敵にすることじゃない。AIを、ちゃんと道具として使うということ。
カナちゃん
答えをもらう相手ではなく、考えるための相手。
テイル先輩
そう。AI時代に大事なのは、AIを使わないことではなく、AIに考えを預けっぱなしにしないこと。
AIに任せるほど、楽になることがあります。でも、楽になったぶん、何を考えるのか。そこに、AI時代の学び方と働き方の分かれ道があります。
ハヤテ君
AIを使うとバカになるんじゃなくて、AIに「考えたことにしてもらう」と危ないんだな。
テイル先輩
そうそう。AIに考えてもらうんじゃなくて、AIと一緒に考える。この違いは、かなり大きいよ。
AI時代の追い風ラジオ。第3回は、「AIを使うとバカになる?それとも賢くなる?」でした。
この回の台本と、AIへの問いかけテンプレ集は、概要欄のページにまとめています。
それではまた次回。あなたのつくる、はたらく、そだてるに、よい追い風が吹きますように。

AIへの問いかけテンプレ集

① AIの意見に反論させ、視点を広げたいとき

次の考えについて、あえて反対の立場から説明してください。

【ここにAIの回答や自分の意見を貼る】

・どんな条件なら、この使い方は思考力を下げますか?
・逆に、どんな使い方なら思考力を高めますか?
・分かっていることと、まだ推測にすぎないことを分けて教えてください。
・子ども、学生、社会人で違いはありますか?
・自分で考える余地を残す聞き方に変えるなら、どう聞けばいいですか?

② 自分の考えの弱点を突きたいとき(AIを反論役にする)

次の考えについて、あえて弱点を指摘してください。

【ここに自分の考えを貼る】

・この考えの危ない点はどこですか?
・反対する人がいたら、何と言いそうですか?
・失敗するとしたら、どこで失敗しますか?
・前提が間違っているとしたら、何が間違っていますか?

③ 学習・指導で、答えをすぐ渡さず考えさせたいとき

私が次の問題でつまずいています。答えをすぐに教えず、次の順番で聞きながら導いてください。

【ここにつまずいている問題を貼る】

・まず、どこまで分かっているか聞く。
・式を立てるなら、何と何を比べるか聞く。
・似た問題を一緒に解いてみようと提案する。
・答えを出す前に、私の考えを聞く。

④ 仕事の提案書のレビュー観点を増やしたいとき

以下の前提で提案書の構成案を出してください。ただし、弱い論点も指摘してください。

【ここに提案の前提やドラフトを貼る】

・この提案に対して、顧客側が不安に思う点を10個出してください。
・費用対効果の説明が甘い部分を指摘してください。
・この文章を、意思決定者向け・現場担当者向け・経営者向けに分けて見直してください。
・最後に、まだ人間が確認すべき論点をリストアップしてください。

他のエピソード

お気軽にご相談ください

ご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら