予測エンジンを開発しました〜AIが先回りで教えてくれる、新しい資金繰りのかたち〜
サービス内容
縁あって、とある税理士の方と協力し、シミュレーションエンジンを開発しました。
過去データを元に資金繰りについての未来予測・シミュレーションができるエンジンです。
汎用的に作っているので、資金繰り以外にも使うことができます。
もし、自分の会社の「現金が尽きる日」が分かったら
唐突ですが、想像してみてください。
「今から2年半後の◯月、御社の現金が完全に底をつきます」
そう告げられたとしたら、社長としてどう動きますか?
おそらく、慌てるよりも先に「今のうちに何ができるか」を考え始めるのではないでしょうか。融資の枠を広げておく、固定費を見直す、設備投資のタイミングをずらす・・・
2年あれば、打てる手は山ほどあります。
これまで「資金ショートの予兆」は、月次試算表を眺めて社長と税理士の経験と勘で察知するものでした。それを、過去の実績と社長自身の頭の中にある計画を組み合わせてシミュレーションし、先回りで警告してくれる。
そんな仕組みを作り上げました。
今回は、私たちが開発を進めている資金繰りシミュレーションエンジンが、中小企業の経営に何をもたらすのかを、できるだけ専門用語を使わずにご紹介します。
1. 「絶対こうなる」ではなく、「幅」で未来を見せる

ビジネスの現場で「売上は絶対にこの数字になります」と言い切れる人はいません。
天気予報が「降水確率70%」と幅を持って伝えるように、ビジネスの未来も本来「幅」で語るべきものです。
今回開発したエンジンは、未来の現金残高を「楽観」「中立」「悲観」 の3本のラインで描き出します。
- 楽観:うまくいったときの上限
- 中立:もっとも起こりやすいライン
- 悲観:90%の確率で、これ以下にはならない最悪のライン
特に大事なのが 悲観ライン です。
「最悪のケースでも、何月に現金がいくらになるのか」が一目で分かる。ここが見えて初めて、「じゃあ手前で融資枠を確保しておこう」「この投資は1年遅らせよう」という具体的な打ち手につながります。
絶対の予言ではなく、リスクの底を数学的に押さえる。これが新しい資金繰り予測の出発点です。
2. 過去の数字だけじゃない。「社長の頭の中」もちゃんと組み込む

過去の試算表をエクセルで右肩に伸ばすだけの予測なら、これまでもありました。
でもそれだけだと、こんな未来は描けません。
- 「来期は若手を1人採用して、設備投資もする」
- 「景気が読めないから、しばらく現状維持」
- 「下準備の年として売上は5%落とすが、政策金融公庫から500万借りて将来に投資する」
こうした 社長一人ひとりの意思や計画 を、ヒアリングを通してAIが受け取り、未来予測にきちんと反映します。
しかも、面白いのはここから。
「売上を15%伸ばす」と入力した場合、このエンジンは売上だけを引き上げたりしません。
「売上が増えるなら、当然 仕入れも外注費も連動して増えるはず」
と判断して、コスト全体を自動的に調整します。
売上だけ上がって、コストは過去のまま据え置き・・・そんな夢のような魔法のグラフを描かないのが、このエンジンの誠実さです。
3. AIが「暴走」しないように、ちゃんとブレーキがついている

AIによる未来予測には、実はよくある落とし穴があります。
たとえば「設備投資で一時的に出費が増える月」を計算に入れた瞬間、機械はそれを 「ずっと続くトレンド」と勘違いして、口座残高が無限に増え続ける ような変な予測を出してしまうことがあるのです。
このエンジンには、そうした 暴走を自動で検知するブレーキ機構 が組み込まれています。
- 予測の現金残高が、過去の最高残高の3倍を超えたら「異常」と判定
- 自動的に別のより慎重な予測方式に切り替える
- それでもおかしければ、さらに別の方式へ・・最終的に 世界中の時系列データで事前学習されたAI が落ち着きどころを見つける
つまり、ひとつのモデルが暴走しても、別のモデルがブレーキを踏む。
人間が常時チェックしなくても、おかしな数字が一人歩きしない仕組みになっています。
(8つの分析モデルと5つの評価指標で常に競わせ、ベストのモデルを選定します。またどうしても精度が出ない場合はLLM(言語モデル)で予測することも可能です。)
4. 社長の「期待」に合わせて数字を曲げない

(※2026年3月までは実データ。以降は全てシミュレーションです。)
実はこれが、開発チームが一番こだわっている哲学かもしれません。
ある社長は「期末の現預金は1,200万円になる予定」とおっしゃっていました。
ところが、モデルの中立予測は 3,540万円・・・大きくズレていました。
ここで多くのシステムは、「社長の感覚に合わせて」数字を調整したくなります。
そのほうが現場ウケが良いからです。
でも、それをやってしまえば、もはやそれは 予測ではなく「忖度(そんたく)」 です。
このエンジンは、社長の申告とのズレは 記録だけ残して、予測そのものは絶対に歪めません。
理由はシンプルで、1社だけに無理やり合わせると、他の企業に使ったときに全部おかしくなる からです。
「冷徹に思える正直さ」こそが、長く使えるツールの条件 ── これは中小企業の意思決定にとっても、本来一番ありがたいことのはずです。
中小企業の経営にとって、何が変わるのか
このエンジンは、税理士の先生方と一緒に、中小企業の経営現場で本当に使えるものを目指して開発を進めています。
描いている未来は、こんな景色です。
- 2年以上前から 資金ショートの危険月が見える
- 社長の 新規投資・採用・借入の判断 が、未来の現金にどう響くかが事前に分かる
- 「悲観シナリオでも資金が回るか」を 銀行融資の説明資料 にそのまま使える
- 顧問税理士との月次面談が、過去の答え合わせから、未来の打ち手の議論 に変わる
数字を眺めて不安になる時代から、数字を使って先回りで手を打つ時代へ。
中小企業の経営判断のあり方を、足元から少しずつ変えていきたいと考えています。
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自分の人生にも当てはめてみる
少し話を広げます。
このシミュレーション、実は 「私やあなた自身の人生のキャッシュフロー」 に当てはめても同じことが言えます。
- 過去のデータをそのままコピペした計画になっていないか
- 上司や家族の期待に合わせて、無意識に 数字を「忖度」して いないか
- 自分の人生の「悲観シナリオ」を、ちゃんと見たことがあるか
少し怖い問いですが、手遅れになる前に知っておくべき真実 かもしれません。
会社の未来も、人生の未来も。
「絶対」ではなく「幅」で見て、最悪を押さえ、そして手を打つ。
そんな当たり前のようでなかなかできなかったことを、AIとデータを駆使することで、実現できてしまう時代が、いま始まっています。
汎用的なエンジンなのでカスタマイズも可能
このシミュレーションエンジンは、きっかけは資金繰りシミュレーションではありますが、それに特化しているわけでもなく、汎用的なエンジンとして作っています。
過去のデータ + 今後の予定 -> 8モデル x 5つの評価指標を組み合わせた多段シミュレーション
という構図であり、様々な分野に応用可能です。例えば以下のような。
| 製造業 | 人件費高騰のシミュレーション 大型設備投資と補助金の資金繰りリミュレーション 部品調達・原材料コスト変動シミュレーション 生産設備の稼働率・故障リスク予測 |
| 小売・飲食・マーケティング | ダイナミックプライシングの収益シミュレーション |
| 人事・組織・プロジェクト管理 | 採用予算・採用人数の着地シミュレーション 人件費・賞与原資のシミュレーション 大規模プロジェクトの工期・予算超過シミュレーション |
| インフラ・不動産・建設分野 | 商業テナントの賃料収入シミュレーション 設備保全・インフラ修繕のコストリスク予測 資材高騰・資金繰り予測 |
| 医療・ヘルスケア | 病院の病床稼働率・満床リスク予測 |
| 金融・保険・リスク管理 | 融資先企業の倒産確率・不良債権化予測 |
などなど。
過去のデータとどんなシミュレーションがしたいかとご意見をいただければ、内容に合わせてシミュレーションエンジンを調整・カスタマイズ可能です。
データを活かしたシミュレーション・未来予測にご興味がある方は、ぜひお気軽にご連絡ださいね。