AI時代の追い風ラジオ

第6回 消えた動画を10時間分取り戻した話 | AIは”昔からあるIT技術”への案内役になる

AI時代の追い風ラジオ。
この番組は、AIが当たり前になった時代に、つくる、はたらく、そだてる人の追い風になる話を、ゆるく、でも現場目線で考えていく番組です。
ハヤテ君
やばい。
ハヤテ君
SDカードの動画、全部消えたかもしれない。
カナちゃん
えっ……全部ですか?
ハヤテ君
うん。撮りためてた動画が、まるごと見当たらない。
エージェント
復旧できます!
カナちゃん
そんな簡単に言って大丈夫ですか?
テイル先輩
いいところに気づいたね。
テイル先輩
データ復旧は、できることもある。
テイル先輩
でも、やり方を間違えると、助かるものまで壊してしまうこともある。
テイル先輩
今日は、AIのちょっと違う使い方を考えてみよう。
テイル先輩
AIは、チャットや画像生成だけじゃない。昔からあるIT技術にたどり着くための、案内役にもなるんだ。

① AIは、生成するだけの道具じゃない

生成AIというと、チャット、文章作成、画像生成、文字起こし、翻訳。そんな使い方を思い浮かべる人が多いかもしれません。
カナちゃん
たしかに。AIに聞く、AIに書いてもらう、AIに作ってもらう、というイメージが強いです。
ハヤテ君
あとは画像生成とか、議事録とか、翻訳とか。便利なスーパー秘書っしょ。
テイル先輩
もちろん、それも強い。
テイル先輩
でも、今回感じたのは、AIの価値は“AI単体の能力”だけじゃない、ということなんだ。
カナちゃん
AI単体の能力だけじゃない?
テイル先輩
うん。Windows 95から数えても、もう30年以上。
テイル先輩
その間に、ファイル、動画、音声、圧縮、バックアップ、復旧、コマンドライン、スクリプト。ものすごい量のIT技術が積み上がってきた。
ハヤテ君
でもさ、その技術って、普通は知らないんだよね。
ハヤテ君
エラーが英語で出た時点で、だいたい心が折れる。
カナちゃん
分かります。検索しても、どれが自分の状況に合っているのか分からないです。
テイル先輩
そこにAIが入ると、入口が近くなる。
テイル先輩
何を調べればいいか。何をしてはいけないか。どの順番で試すか。結果をどう読めばいいか。
テイル先輩
AIは、昔からある技術と、今困っている自分の間に橋をかけてくれるんだよね。

② SDカードの動画が消えた

ハヤテ君
で、今回の事件ですよ。
ハヤテ君
SDカードの動画を、誤って全部消したかもしれない。
カナちゃん
それは……怖いですね。
ハヤテ君
最初に思ったのは、「終わった」だった。
ハヤテ君
でも、そこでAIに聞いたんだよ。SDカードの動画を消したかもしれない。復旧できる?って。
エージェント
復旧手順を生成します!
テイル先輩
ここで一番大事なのは、すぐに作業を始めないこと。
カナちゃん
えっ、復旧したいのに、すぐ作業しないんですか?
テイル先輩
うん。データ復旧で最初に考えるべきことは、「取り戻す」より先に、「これ以上壊さない」なんだ。
ハヤテ君
あー……。
カナちゃん
SDカードに新しく撮影したり、保存したりすると、残っているデータに上書きされるかもしれないんですね。
テイル先輩
そう。だから、AIに聞くとしても、最初の問いはこう。
テイル先輩
「復旧したいです」だけじゃなくて、「これ以上悪化させないために、何をしてはいけませんか?」
ハヤテ君
聞き方で、最初の一手が変わるんだよね。
テイル先輩
うん。AIを使うときほど、まず安全側に倒す。

③ ファイルは出てきた。でも再生できない

そこから、復旧用のツールを使って、SDカードの中に残っているデータを探していきます。
ハヤテ君
復旧ソフトでスキャンしたら、ファイルは出てきたんだよ。
カナちゃん
おお。じゃあ戻ったんですか?
ハヤテ君
と思うじゃん?
ハヤテ君
VLCで開いても、全然再生できない。
カナちゃん
ファイルはあるのに?
エージェント
ファイルは存在します!
テイル先輩
うん。そこが今回のポイントなんだ。
テイル先輩
“ファイルがある”と、“動画として再生できる”は違う。
カナちゃん
たしかに……。見た目は戻っていても、中身が壊れていることがあるんですね。
ハヤテ君
しかもファイル名もバラバラ。拡張子も怪しい。大きいファイルはあるのに、動画としては開けない。
テイル先輩
そこで、AIに状況を説明していく。
テイル先輩
「ファイルは復元できた。でも再生できない。動画の形式はこう。エラーはこう出ている。次に何を確認すべき?」
カナちゃん
AIに答えを出させるというより、調査の順番を一緒に考えるんですね。
テイル先輩
そう。ここでAIは、魔法の修理屋じゃない。
テイル先輩
でも、何を調べるべきか、どんなツールがあるか、エラーの意味は何かを整理してくれる。

④ 動画には“目次”と“中身”がある

テイル先輩
ここで、動画ファイルを本に例えてみようか。
カナちゃん
本ですか?
テイル先輩
うん。動画には、映像や音声の“中身”がある。
テイル先輩
でも、それだけでは再生しにくい。どこに何秒目の映像があるか、音声はどう並んでいるか、そういう“目次”も必要なんだ。
カナちゃん
本文だけ残っていても、目次がないと読み方が分からない、みたいな感じですか?
テイル先輩
そうそう。今回の動画は、まさにそれに近かった。
ハヤテ君
AIに相談しながら調べていったら、動画の“目次だけ”みたいなファイルと、“中身だけ”みたいなファイルが、別々に出てきているっぽいと分かったんだよね。
カナちゃん
えっ。動画が半分ずつに分かれていたんですか?
テイル先輩
そう。もちろん最初から見えていたわけじゃない。
テイル先輩
エラーを見て、ファイルの構造を調べて、サイズを比べて、仮説を立てていく。
ハヤテ君
ここで、Claude CodeとかCodexが効いた。
カナちゃん
どう使ったんですか?
ハヤテ君
ファイルを1個ずつ手で見るのは無理だから、調べるための小さなコードを書いてもらう。
ハヤテ君
どのファイルに目次っぽい情報があるか。どのファイルが本体っぽいか。サイズが合う組み合わせはどれか。
テイル先輩
そう。AIに「復旧して」と丸投げするんじゃない。
テイル先輩
人間が仮説を持ち、AIに調査の道具を作ってもらう。
エージェント
ペアを探索します!
テイル先輩
うん、それはいい使い方。

⑤ 昔からある技術を、AIがつないでくれる

カナちゃん
でも、それってAIが直接直したわけではないんですよね?
テイル先輩
そこが大事。AIが直接、動画ファイルを魔法みたいに直したわけじゃない。
テイル先輩
使ったのは、昔からある復旧ツール、動画を調べるツール、動画を整えるツール、そしてPythonのスクリプト。
ハヤテ君
PhotoRecで探して、ffprobeで調べて、ffmpegで確認して、必要なところはuntruncで直して、Pythonで一括処理する、みたいな。
カナちゃん
普通に聞くと、かなり専門的ですね。
テイル先輩
うん。昔なら、検索して、英語の説明を読んで、コマンドを試して、失敗して、また調べて……という感じだったと思う。
ハヤテ君
たぶん、途中で諦めてた。
テイル先輩
でも今は、AIに聞ける。
テイル先輩
「このエラーは何を意味するのか」
テイル先輩
「このコマンドは、元データに書き込むのか、読み込むだけなのか」
テイル先輩
「この作業を一括でやるには、どんなスクリプトが必要か」
テイル先輩
「結果がこうなったら、次は何を疑うべきか」
カナちゃん
AIが答えを出すというより、試行錯誤の相手になってくれるんですね。
テイル先輩
まさにそれ。
テイル先輩
AIの強さは、新しいものを生成することだけじゃない。
テイル先輩
すでに世の中にある技術を、今の自分の問題につなぎ直してくれることにもある。

⑥ 完全ではなくても、救える範囲を広げる

カナちゃん
目次と中身の組み合わせが分かったら、全部きれいに戻ったんですか?
ハヤテ君
きれいに戻ったものもある。
ハヤテ君
でも、中には途中で壊れているものもあった。
カナちゃん
途中で壊れている?
テイル先輩
SDカードの中で、データがきれいに一列に並んでいるとは限らないんだ。
テイル先輩
断片的に残っていたり、途中だけ欠けていたりする。
カナちゃん
じゃあ、少しでも壊れていたら全部ダメなんですか?
テイル先輩
そこも面白いところで。
テイル先輩
壊れている部分だけ飛ばして、前後を救える場合がある。
ハヤテ君
まさにそれ。完全に元通りじゃなくても、ほとんど見られる状態まで戻せたものがあった。
エージェント
完全復旧です!
テイル先輩
そこは言い切らない。
テイル先輩
データ復旧では、戻らないものもある。壊れているものもある。ノイズが残ることもある。
カナちゃん
AIを使えば何でも元通り、ではないんですね。
テイル先輩
うん。そこは正直でいたい。
テイル先輩
AIは魔法じゃない。復旧ツールも魔法じゃない。
テイル先輩
でも、「ここまでしか無理」と思っていた場所から、もう一歩先の可能性を探せる。
ハヤテ君
それは本当に感じた。
ハヤテ君
ただ復旧ソフトを回して終わりだったら、「再生できない。ダメだった」で終わってたと思う。
ハヤテ君
でもAIに聞きながら、ファイルの構造を調べて、ペアを探して、壊れている場所を避けて、検証していった。
テイル先輩
それが、AI時代の“使いこなし”なんだよね。

⑦ データ復旧でAIを使うときの注意

カナちゃん
でも、ひとつ気になります。
カナちゃん
SDカードの中って、写真や動画、個人情報が入っていることもありますよね。
テイル先輩
そこは、とても大事。
テイル先輩
復旧対象には、家族の写真、仕事の資料、顧客情報、撮影データ、位置情報が含まれていることがある。
テイル先輩
だから、AIに相談するときも、実ファイルや個人情報をそのまま投げない。
ハヤテ君
状況を説明する。エラー文を見せる。必要ならファイル名やパスはぼかす。
カナちゃん
あと、AIが出したコマンドを、そのまま大事なSDカードに向けて実行するのも怖いですね。
テイル先輩
その通り。
テイル先輩
特に復旧では、「読み込むだけ」なのか、「書き込む」のかを確認する。
テイル先輩
元データにはなるべく触らず、コピーを作って、そのコピーに対して試す。
テイル先輩
そして、復元したデータは別の場所に保存する。
エージェント
安全第一です!
テイル先輩
それは本当にそう。

⑧ 結果、10時間分の動画が戻ってきた

こうして、復旧ツール、動画解析、コマンド、Pythonスクリプト、そしてAIとの対話を組み合わせながら、作業は進んでいきました。
カナちゃん
最終的には、どれくらい戻ったんですか?
ハヤテ君
97本。
ハヤテ君
合計で、約10.4時間。
ハヤテ君
容量でいうと、117GB。
カナちゃん
えっ……それはすごいですね。
ハヤテ君
もちろん、全部が完全に元通りではない。
ハヤテ君
でも、きれいに戻ったものもあるし、一部にノイズがありながらも、ほとんど見られるところまで戻ったものもある。
テイル先輩
大事なのは、ここで「AIが全部直した」と言わないことだね。
カナちゃん
AIと一緒に、昔からある技術を使いこなした、という感じですね。
テイル先輩
そう。
テイル先輩
AIは、ハンマーでも、魔法の杖でもない。
テイル先輩
どちらかというと、道具箱を一緒に開けてくれる相棒なんだ。
ハヤテ君
道具箱か。いいね。
ハヤテ君
自分だけだったら、どの道具が何に使えるのか分からなかった。
ハヤテ君
でもAIに聞きながらなら、「この道具はこう使う」「この順番は危ない」「この結果なら次はこれを疑う」って進められた。
テイル先輩
それが、今回の一番大きな学びだね。

今日のまとめ

今日のまとめです。
テイル先輩
ひとつ目。AIの使い方は、チャット、画像生成、翻訳だけではない。
テイル先輩
これまで積み上がってきたIT技術に、たどり着くための案内役にもなる。
カナちゃん
ふたつ目。データ復旧では、まず悪化させないことが大事。
カナちゃん
元データに書き込まない。コピーを作る。復元先を分ける。個人情報や機密をそのままAIに渡さない。
ハヤテ君
みっつ目。Claude CodeやCodexのようなコーディングエージェントは、調査、分類、結合、検証の小さな道具作りにも使える。
エージェント
道具箱を開けます!
テイル先輩
うん、そのくらいがちょうどいい。
テイル先輩
AIに全部任せるのではなく、AIと一緒に道具を選ぶ。
テイル先輩
AIに完成を宣言させるのではなく、結果を見ながら次の仮説を立てる。
テイル先輩
そして、知らなかった技術を、今の自分の問題につなぎ直す。
テイル先輩
AI時代に広がる可能性って、そういうところにもあるんだと思う。
AI時代の追い風ラジオ。今回は、「消えた動画を10時間分取り戻した話。AIは昔からあるIT技術への案内役になる」でした。
それではまた。あなたのつくる、はたらく、そだてるに、よい追い風が吹きますように。

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