製造業で「在庫表は合っているのに、現物がない」が起きる理由|エクセル(Excel)在庫管理の限界
「エクセルでは在庫が10個あることになっている。でも、棚を見たら6個しかない。」
製造業の現場では、こうしたことが珍しくありません。
在庫表を確認すると数字は入っている。
入庫や出庫の記録も一応残っている。
それなのに、いざ材料や部品を使おうとすると、
- 必要な部品が見つからない
- 思っていた数量より少ない
- 逆に、ないと思って発注したら奥から出てきた
- 棚卸をするとExcelの数字と合わない
といったことが起こります。
こうなると、
「入力をちゃんとしていないからでは?」
「担当者が確認すればいいのでは?」
と思われがちです。
しかし実際には、担当者個人の問題ではなく、Excelで在庫管理する仕組みそのものが、現在の業務に合わなくなっている可能性があります。
この記事では、製造業の在庫管理で数字と現物が合わなくなる理由と、どの段階からExcel以外の方法を検討すべきなのかを整理します。
在庫表は合っているのに、なぜ現物がないのか
たとえば、ある工場で部品AをExcel管理しているとします。
朝の時点では、
在庫数:100個
となっていました。
その後、現場で20個使用しました。
本来であれば、
100個 − 20個 = 80個
になるはずです。
しかし、実際の現場では必ずしも使用した瞬間にExcelへ入力するわけではありません。
作業を優先して、夕方まとめて入力する。
あるいは、
「あとで入力しよう」
と思って忘れてしまうこともあります。
するとExcel上は100個のままなのに、棚には80個しかありません。
さらに別の人がExcelを確認して、
「100個あるなら発注しなくて大丈夫」
と判断します。
翌日さらに使用した結果、突然在庫不足が発覚する。
このように、Excel在庫管理では、
現物が動くタイミングと、数字が更新されるタイミングにズレが生まれやすい
という特徴があります。
よくある原因1:入出庫を「あとで入力」している
製造現場では、Excel入力そのものが仕事の中心ではありません。
材料を運ぶ。
製品を作る。
設備を動かす。
検品する。
こうした作業が優先されます。
そのため、
「材料を10個使ったら、その場でPCを開いてExcelを更新する」
という運用は、どうしても定着しにくくなります。
結果として、
- 午前中の使用分を夕方入力する
- 紙にメモして後から入力する
- まとめて入力しようとして忘れる
- 数量を思い出しながら入力する
といった運用になります。
これでは、Excel上の在庫数は常に少し遅れて更新されます。
つまり問題は、
入力する人が悪いのではなく、現場の動きと入力方法が合っていない
ことにあります。
よくある原因2:複数人が同じ在庫を触っている
Excel在庫管理は、担当者が1人だけで、品目数も少ないうちは比較的うまく機能します。
しかし、
- 倉庫担当
- 製造担当
- 購買担当
- 営業担当
- 管理者
など複数人が同じ在庫情報を見るようになると、一気に難しくなります。
たとえば、
Aさんが部品を20個出庫。
Bさんも同じ日に10個出庫。
AさんはExcelへ入力したが、Bさんは未入力。
この時点で数字がずれます。
さらに、
「誰かが入力しただろう」
という認識違いも起こります。
Excelには数字は残りますが、
現場で実際に何が起きたのか
までは分かりにくいことがあります。
在庫管理で重要なのは、
「現在何個あるか」
だけではありません。
本来は、
- 誰が
- いつ
- 何を
- 何個
- どこから
- どこへ
動かしたのかまで追えることが重要です。
よくある原因3:在庫表が複数存在している
こんな状態になっていないでしょうか。
- 倉庫用Excel
- 製造部用Excel
- 購買部用Excel
- 営業部用Excel
あるいは、
- 在庫管理.xlsx
- 在庫管理_最新.xlsx
- 在庫管理_最新版.xlsx
- 在庫管理_最新版2.xlsx
といった状態です。
ファイルが増えるほど、
「どれが正しい数字なのか」
が分からなくなります。
Excel自体は非常に便利なツールですが、基本的にはファイル単位で情報を管理する道具です。
そのため、
複数部署・複数拠点・複数担当者で同時に在庫を扱う業務とは、徐々に相性が悪くなります。
よくある原因4:品名や品番の表記がバラバラ
在庫管理で意外に多いのが、品目表記の問題です。
たとえば同じ部品でも、
- ボルト10mm
- 10mmボルト
- BOLT-10
- M10ボルト
と登録されている。
人間が見れば同じものだと分かります。
しかしExcel上では、別の商品として扱われてしまう場合があります。
担当者が変わるたびに表記ルールが微妙に変わることもあります。
こうして、
実際には在庫があるのに検索で見つからない。
同じ材料を別々に発注してしまう。
といった問題が発生します。
在庫管理では、数字を管理する前に、
品目マスターを統一する
ことが非常に重要です。
よくある原因5:「どこにあるか」が管理されていない
Excel上では、
「部品A:50個」
と書かれている。
しかし実際には、
- 第1倉庫に20個
- 第2倉庫に20個
- 製造ライン横に10個
かもしれません。
さらに、
「棚番号までは管理していない」
という会社もあります。
この状態では、
数字上は在庫があるのに現場では見つからない、
ということが起こります。
特に、
- 品目数が多い
- 保管場所が複数ある
- 工場内に仕掛品が存在する
- 複数拠点がある
会社では、数量だけでなくロケーション管理が必要になります。
Excel在庫管理そのものが悪いわけではない
ここで重要なのは、
「Excelを使っているからダメ」
という話ではないことです。
Excelは非常に優秀です。
たとえば、
- 在庫品目が50種類程度
- 入出庫が1日数回
- 管理担当者が1人
- 保管場所も1か所
- 棚卸も簡単
という会社なら、Excelで十分な場合があります。
むしろ高額な在庫管理システムを導入する方が、運用負担になるかもしれません。
問題になるのは、事業が成長して、
- 品目が増えた
- 担当者が増えた
- 拠点が増えた
- 入出庫回数が増えた
- 在庫情報を複数部署で使うようになった
にもかかわらず、
管理方法だけが昔のまま
になっているケースです。
こんな状態になったらExcel卒業を検討するタイミング
次の項目に複数当てはまる場合は、在庫管理方法を見直すタイミングかもしれません。
- 棚卸をすると毎回数字が合わない
- 在庫確認のために倉庫へ見に行っている
- 「その材料どこにありますか?」という質問が多い
- 発注済みかどうか担当者しか分からない
- Excelを更新できる人が限られている
- 同じ在庫表を複数人が触っている
- ファイルが複数存在している
- 拠点ごとに別のExcelを使っている
- 月末の在庫集計に時間がかかる
- 欠品してから初めて気づく
- 不要な材料を二重発注したことがある
- 担当者が休むと在庫状況が分からない
一つひとつは小さな問題でも、積み重なると大きなコストになります。
いきなり大規模な在庫管理システムを導入する必要はない
Excelが限界だからといって、必ずしも数百万円規模の在庫管理システムを導入する必要はありません。
中小製造業の場合、
まずは最低限、
- 品目マスター
- 現在庫数
- 入庫
- 出庫
- 保管場所
- 入出庫履歴
だけでも大きく改善できることがあります。
たとえば現場で、
部品のQRコードをスマートフォンで読み取る。
「出庫」を選ぶ。
数量を入力する。
これだけで、
在庫数がその場で更新されます。
管理者はPCから現在庫を確認できる。
さらに、
「誰がいつ20個出庫した」
という履歴も残ります。
Excelを完全に捨てなくても、
必要なデータをExcelやCSVで出力できるようにしておけば、従来の集計作業も継続できます。
「全部システム化」ではなく、困っている部分だけ変える
業務改善では、
「今のExcelを全部廃止しましょう」
と考える必要はありません。
むしろ、
今うまくいっている部分は残して、
困っているところだけシステム化する
方が導入しやすいことがあります。
たとえば、
現在使っているExcelの商品一覧はそのまま活用する。
一方で、
入庫・出庫だけスマホから登録できるようにする。
そこから、
在庫履歴を残す。
発注点を下回ったら知らせる。
必要になれば少しずつ機能を追加する。
この方が現場にも受け入れられやすくなります。
在庫管理で一番大切なのは「正しい数字を見ること」
在庫管理システムを導入する目的は、立派なシステムを作ることではありません。
必要なときに、
「今、何が、何個、どこにあるのか」
が分かることです。
そして、
「なぜその数字になっているのか」
を履歴から追えること。
この2つができるだけでも、
- 欠品
- 二重発注
- 過剰在庫
- 棚卸差異
- 確認作業
を減らしやすくなります。
もし、
「Excel上ではあるのに、現場にない」
ということが何度も起きているなら、
Excelをもっと複雑にする前に、管理方法そのものを見直してみる価値があります。
今使っている在庫Excelから改善方法を整理できます
「在庫管理システムを導入するほどの規模ではない」
「今のExcelをなるべく活かしたい」
「どこまでシステム化すればよいのか分からない」
という場合でも、現在のExcelや実際の業務フローを確認しながら、
- Excelのままでよい部分
- 改善した方がよい部分
- システム化すると効果が出やすい部分
を整理できます。
大規模なシステム導入を前提とせず、現在の業務に合わせて小さく改善する方法から検討できます。
在庫管理の数字と現物が合わず困っている場合は、まず現在の管理方法からご相談ください。