自社サイトにAIチャットを置く前に決めたこと|「それらしい嘘」を防ぐ7つの設計

自社サイトに、質問へその場で答えるAIチャットを設置しました。

AIチャットは、作ること自体は以前よりずっと難しくありません。けれど、会社の名前が入った画面で動かすなら、考えるべきことは「答えられるか」だけではありません。AIは、分からないことにももっともらしい答えを返すことがあります。価格、サービスの範囲、成果の約束。ひとつの誤った回答が、会社への信頼を損なう可能性があります。

この記事では、便利なチャットを作った話ではなく、公開前に何を決め、どのように安全側へ寄せたかを紹介します。サイトへのAIチャット導入を検討している方の判断材料になれば幸いです。

まず「置かない理由」を先に考えました

最初に確認したのは、導入すると何が起こり得るかです。ログイン不要のサイトに置く以上、誰でも質問でき、予想外の聞き方もされます。そこで次の3つに答えが出るまでは、公開しないと決めました。

  • 無制限の利用や意図しない使われ方を抑えられるか
  • 運用費用が予想外に増えないか
  • 会社として言ってはいけないことを、言わせない仕組みがあるか

「まず置いて、問題が起きたら直す」では遅い領域があります。特に会社の情報を扱うチャットは、止め方や回答の範囲を先に設計することが大切だと考えました。

1. サイトに書いていないことは答えない

このチャットが材料にするのは、自社サイトで公開している文章だけです。社内資料、手元のファイル、過去の提案書は読み込みません。

理由は単純です。社内には更新前の資料や、特定のお客様向けの情報が残っていることがあります。「注意して扱う」だけでは、いつか混ざる可能性がある。そこで、そもそも読む経路を作らないことにしました。

質問に対する根拠がサイト内に見つからないときは、AIに文章を作らせません。「サイトには記載がないため、直接ご相談ください」とご案内します。答えられないことを、無理に答えない。これは不便に見えても、信頼のために必要な線引きです。

2. 価格と約束は、言い換えさせない

価格は特に誤解が生まれやすい情報です。サイトに掲載している金額表現は、その文言どおりに答える場合だけ通すようにしています。一部を抜き出す、表現を丸める、「おおよそ」と推測する、といった回答はさせません。

掲載していない費用については、業務の規模や既存環境で変わるため、個別にお見積りすることを明確にします。同じ考え方で、「必ず改善できる」「確実に削減できる」といった成果保証も使わせません。

守れない約束を文章にしないことは、営業のためではなく、長く信頼いただくための基本だと考えています。

3. 「作らない方がよい」も選択肢にする

AIチャットは、質問に答えながらサービスを勧めることもできます。しかし、相談の結果として必要なのが、既存のSaaS、Excelの整理、運用の見直しである場合もあります。今は仕組みを作らない方がよいこともあります。

そのためチャットにも、「何かを売ることが目的ではない」と最初から伝えています。作れる会社だからこそ、作らない方がよい判断もお伝えする。この方針を明示しなければ、AIは会話を無難な提案へ寄せてしまいます。

4. 連絡先はチャットで集めない

チャット内で氏名、会社名、メールアドレス、電話番号を聞くことはしません。相談が必要になった段階で、目的と入力項目が分かりやすいフォームへご案内します。

会話を始めた直後に個人情報の入力を求められると、聞きたいことがあっても利用をためらうものです。質問する場所と連絡先を送る場所を分けることで、訪問者が自分のペースで判断できる導線にしました。

5. 保存する前に、伏せる

会話は改善のために記録しますが、メールアドレス、電話番号、URL、長い数字の並びは、保存前に自動で伏せます。IPアドレスやブラウザ情報は保存しません。また、保存期間は最初の画面でお知らせします。

大切なのは「後から消す」ではなく、「伏せてから保存する」ことです。画面に書いた保存期間と実際の設定が一致しているかも確認できるようにし、運用上のうっかりに頼らない形を目指しました。

6. 上限と止め方を、公開前に作る

1日に受け付ける会話数と費用には上限を設けています。上限に達した場合はサイト全体を止めるのではなく、チャットの受付だけを止め、問い合わせフォームをご案内します。必要ならチャットだけ、あるいは裏側の処理も含めて停止できます。

費用は、4往復程度の会話で1円未満、月100〜300会話なら月250円ほどを想定しています。ただし、これは日々の運用費です。安全に動かすための設計・実装・確認には別の手間がかかります。安いから簡単、ではありません。

7. 答えられなかった質問を、サイト改善に使う

運用を始めて気づいたのは、回答できなかった質問の一覧が、サイトに足りない情報の候補になることです。

本当にサイトに書いていないなら、よくある質問や記事に追加する。書いてあるのに見つからないなら、ページの言い方や探し方を改善する。チャットは訪問者への窓口であると同時に、サイトの分かりにくさを教えてくれる仕組みでもあります。

確認も続けます。記事を公開したら情報を更新し、毎週は異常がないかを短時間で確認する。月に一度は実際の質問文を読み、次に何を書くべきかを考える。数字だけでは見えない困りごとが、そこに残るからです。

まとめ

自社サイトにAIチャットを置くとき、重要なのは回答の巧みさよりも、答えてよい範囲を守れることです。

  • 情報源を公開ページに絞る
  • 根拠がなければAIを呼ばない
  • 価格や約束を推測・言い換えさせない
  • 個人情報はチャットで集めない
  • 保存前の伏せ字、利用上限、止め方を用意する
  • 答えられなかった質問を、サイト改善へつなげる

AIは、考えなくてよい道具ではありません。何を任せ、どこで人が責任を持つかを考えるための道具です。だからこそ、チャットも「何でも答える窓口」ではなく、困りごとを整理し、次の一歩を一緒に考える入口として育てていきます。

「こんなことを聞いてよいのかな」という段階でも大丈夫です。サイトのチャット、または30分の無料相談から、お気軽にお声がけください。

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