Power Appsと独自開発、結局どちらが安い?10人・50人・3年間のTCOで比較
Microsoft 365を使っている企業で業務システムを作ろうとすると、よく出てくるのが、
「Power Appsで作るべきか」
「最初からWebシステムを独自開発すべきか」
という問題です。
Power Appsは初期開発が早く、Microsoft 365との連携もしやすい一方で、利用者が増えるとユーザー単位のライセンス費用が積み上がります。
一方、独自開発は初期費用が高くなりやすいものの、利用者数が増えてもライセンス費用が比例して増えるとは限りません。
そのため、比較するなら初期費用だけではなく、
3年間でいくらかかるのか
というTCO、つまり総保有コストで考える必要があります。
今回は、10人利用と50人利用のケースで比較してみます。
今回の前提
まず条件をそろえます。
想定するのは、
- 案件管理
- 申請管理
- 顧客管理
- 在庫管理
などの中小企業向け業務アプリです。
Power Apps側では、Premiumライセンスが必要になる構成を想定します。
Power Apps Premiumは、2026年8月時点のMicrosoft公式価格で、
2,998円/ユーザー/月
です。
独自開発側は、
- Webアプリ
- ログイン
- 一覧
- 登録・編集
- 検索
- 権限管理
- Microsoft 365連携
程度の中規模な業務システムを想定します。
独自開発の初期費用は、ここでは比較しやすいように、
300万円
と仮定します。
また保守費用として、
月5万円
を見込みます。
これはあくまで比較モデルです。
実際には要件によってかなり変わります。
まずPower Appsの3年間コスト
Power Apps Premiumは、
2,998円/人/月
です。
3年間は36か月なので、
2,998円 × 利用人数 × 36か月
で計算できます。
10人でPower Appsを使う場合
10人の場合、
2,998円 × 10人
= 29,980円/月
年間では、
29,980円 × 12
= 359,760円
3年間では、
359,760円 × 3
= 1,079,280円
約108万円です。
ここにPower Appsの初期構築費を加えます。
仮にPower Appsの初期構築を、
80万円
とします。
すると、
初期構築
80万円
ライセンス3年間
約108万円
合計
約188万円
となります。
10人規模なら、かなり低コストです。
50人でPower Appsを使う場合
次に50人です。
2,998円 × 50人
= 149,900円/月
年間では、
149,900円 × 12
= 1,798,800円
3年間では、
1,798,800円 × 3
= 5,396,400円
約540万円です。
初期構築費80万円を加えると、
初期構築
80万円
ライセンス3年間
約540万円
合計
約620万円
になります。
ここまで来ると、独自開発とかなり差が縮まります。
独自開発の3年間コスト
独自開発では、
初期開発費300万円
月額保守5万円
とします。
保守費は3年間で、
5万円 × 36か月
= 180万円
です。
そのため、
初期開発
300万円
3年間保守
180万円
合計
480万円
となります。
利用者が10人でも50人でも、基本的なシステム構成が同じなら大きくは変わりません。
もちろんサーバー費やAzure利用料などは別途かかりますが、小〜中規模業務システムであれば、月数千円〜数万円程度に収まるケースもあります。
10人の場合の比較
整理すると、
| 項目 | Power Apps | 独自開発 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 80万円 | 300万円 |
| 3年ライセンス | 約108万円 | ほぼなし |
| 3年保守 | 含む想定 | 180万円 |
| 3年合計 | 約188万円 | 約480万円 |
10人規模では、
Power Appsの方が約292万円安い
という結果になります。
この規模なら、独自開発よりPower Appsの方が合理的なケースが多いでしょう。
50人の場合の比較
50人になると、
| 項目 | Power Apps | 独自開発 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 80万円 | 300万円 |
| 3年ライセンス | 約540万円 | ほぼなし |
| 3年保守 | 含む想定 | 180万円 |
| 3年合計 | 約620万円 | 約480万円 |
今度は逆転します。
50人規模では、
独自開発の方が約140万円安い
計算です。
つまり、利用人数が増えるとPower Appsのユーザー課金が効いてきます。
何人くらいで逆転するのか
今回の前提では、
Power Apps
80万円
+
2,998円 × 人数 × 36か月
独自開発
300万円
+
180万円
=
480万円
です。
Power Appsが480万円に達する人数を求めると、
おおよそ、
37人前後
になります。
つまり今回のモデルでは、
30人くらいまではPower Apps有利
40人を超えるあたりから独自開発も検討
という目安になります。
もちろんこれは絶対的な数字ではありません。
初期開発費や保守費、ライセンス構成によって変わります。
Power Automate Premiumも必要なら差はさらに広がる
ここまではPower Appsだけで比較しました。
ただし実際の業務では、
- 外部API
- SQL Server
- RPA
- Premium Connector
などを使う場合があります。
この場合、Power Automate Premiumも必要になることがあります。
Power Automate Premiumは、
2,248円/ユーザー/月
です。
仮に50人全員にPower Apps PremiumとPower Automate Premiumが必要なら、
1人あたり、
2,998円
+
2,248円
=
5,246円/月
です。
50人だと、
5,246円 × 50人
= 262,300円/月
年間では約315万円。
3年間では、
約944万円
です。
こうなると独自開発との差はかなり大きくなります。
ただし全員にPremiumが必要とは限らない
ここも非常に重要です。
実際には、
- 申請する人
- 承認する人
- 管理する人
で必要なライセンスが違うことがあります。
また、Microsoft 365の標準範囲でPower Automateが使えるケースもあります。
そのため、
利用者50人だから50人全員にPremiumが必要
とは限りません。
ライセンス設計によって総額は大きく変わります。
Power Appsが向いているケース
Power Appsが向いているのは、
- 利用者が少ない
- 社内だけで使う
- Microsoft 365中心
- UIにそこまでこだわらない
- 早く導入したい
- 業務変更が多い
といったケースです。
特に10人前後の部署内システムなら、独自開発より圧倒的に早く安く作れることがあります。
独自開発が向いているケース
一方、独自開発が向いているのは、
- 50人以上で利用する
- 将来利用者が増える
- 外部ユーザーも使う
- SaaS化する
- 複雑な業務ロジックがある
- UI/UXを細かく作りたい
- 他システムとの連携が多い
といったケースです。
特に、
人数が増えるほどPower Appsのユーザー課金が積み上がる
ため、中長期では独自開発の方が安くなる可能性があります。
独自開発でもMicrosoft環境は活用できる
独自開発を選んだからといって、Microsoft 365との連携を捨てる必要はありません。
Microsoft Graphを使えば、
- Outlook
- Teams
- OneDrive
- SharePoint
- Calendar
- Entra ID
などと連携できます。
例えば、
独自案件管理
↓
Microsoft Graph
↓
Outlook
Teams
OneDrive
SharePoint
という構成です。
つまり、
業務アプリは独自開発
メールやファイルはMicrosoft 365
という組み合わせも可能です。
本当に比較すべきなのは3年間のTCO
ありがちな失敗は、
Power Apps
「初期費用80万円」
独自開発
「初期費用300万円」
だけを比較することです。
これだけ見るとPower Appsが圧倒的に安く見えます。
しかし3年間で考えると、
利用人数によって結果が変わります。
今回のモデルでは、
10人
Power Apps
約188万円
独自開発
約480万円
→ Power Apps有利
50人
Power Apps
約620万円
独自開発
約480万円
→ 独自開発有利
という結果になりました。
5年間ならさらに差が出る
業務システムは3年で捨てるとは限りません。
5年使うケースも多いでしょう。
Power Appsはユーザー課金なので、使い続ける限り料金が発生します。
一方、独自開発では初期費用の比率が年々小さくなります。
そのため、
長期間使うほど独自開発が有利になる
ケースもあります。
特に50人、100人と利用者が増えていくシステムでは、最初から5年間のTCOを計算しておくことをおすすめします。
金額だけで決めない方がいい
ただし、
「独自開発の方が安いから独自開発」
と単純に決めるのも危険です。
Power Appsには、
- 開発が早い
- Microsoft 365連携が簡単
- 修正しやすい
- インフラ管理を減らせる
というメリットがあります。
独自開発には、
- 自由度が高い
- 人数が増えても料金が増えにくい
- UI/UXを自由に作れる
- 外販やSaaS化できる
というメリットがあります。
つまり、
料金 + 業務要件 + 将来性
で判断する必要があります。
迷ったらこの基準で考える
ざっくりした目安として、
10人以下
Power Appsを第一候補
10〜30人
Power Appsを中心に比較
30〜50人
Power Appsと独自開発をTCO比較
50人以上
独自開発を本格的に検討
と考えるとわかりやすいでしょう。
もちろん業務内容によって変わりますが、最初の判断材料にはなります。
まとめ
Power Appsと独自開発のどちらが安いかは、
利用人数と利用期間によって変わります。
少人数・短期間ならPower Apps。
人数が増え、長期間使うなら独自開発。
今回のモデルでは、
10人・3年間
→ Power Appsが安い
50人・3年間
→ 独自開発が安い
という結果になりました。
重要なのは、
初期費用ではなく3年・5年の総額で比較すること
です。
業務システムを導入するときは、
- 利用人数
- 利用期間
- ライセンス
- 初期開発費
- 保守費
- 将来の拡張
をまとめて比較することで、
「安く作ったつもりが、数年後には高くなっていた」
という失敗を防ぎやすくなります。