見積書の作成に毎回1時間かかる会社が、最初に自動化すべきなのは計算ではない
「見積書を作るのに毎回1時間くらいかかっている。AIで自動化できませんか?」
こうした相談を受けたとき、最初にExcelの自動化や生成AIの導入を考えたくなります。
たしかに、単価×数量の計算、合計金額の算出、消費税の計算などは簡単に自動化できます。
しかし実際の見積業務を見てみると、時間がかかっている場所は計算ではないことが少なくありません。
たとえば、
- 過去の似た案件を探す
- 前回いくらで出したか確認する
- 商品や作業の単価を探す
- 顧客に合わせて説明文を書き換える
- 上司や責任者に確認してもらう
- 修正して再び確認してもらう
こうした作業を全部まとめて「見積書作成」と呼んでいます。
そのため、見積業務を効率化したいなら、いきなり「見積書をAIで作る」のではなく、1時間の中で何に時間を使っているのかを分解することから始めたほうがうまくいきます。
「見積書作成」という1つの業務に見えて、実際にはいくつもの仕事がある
たとえば、ある会社で見積書を作る流れが次のようになっているとします。
- 顧客から依頼内容を確認する
- 過去の似た見積書を探す
- Excelの単価表を確認する
- 数量を入力する
- 金額を計算する
- 備考や説明文を書く
- 上司に確認してもらう
- PDFにして顧客へ送る
一見すると「Excelの見積書を自動化すれば解決しそう」です。
ところが、担当者に詳しく聞いてみると、
「計算自体はExcelがやってくれるので数分です」
ということがあります。
時間がかかっていたのは、
「前に似た仕事をやったはずなんだけど、どの見積書だったかな」
と過去のファイルを探している時間だったりします。
あるいは、
「この作業はいくらで出せばいいのか、担当者しか分からない」
という属人化が原因かもしれません。
つまり、計算を自動化しても、見積作成時間が50分から45分になるだけかもしれないのです。
最初に見るべきは「探す・考える・確認する」の3つ
見積書作成を改善するとき、特に確認したいのが次の3つです。
1. 探している時間
過去の見積書、商品情報、単価表、原価表、顧客ごとの条件。
これらを複数のExcelやフォルダから探している場合、かなりの時間を使います。
この場合、必要なのは生成AIとは限りません。
単価表を整理したり、顧客・商品・過去見積を検索できるようにしたりするだけで解決することがあります。
重要なのは、
「見積書を作る」のではなく「見積書を作るための情報を探す」ことが問題になっていないか
を見ることです。
2. 考えている時間
もう一つが、
「今回いくらにするか」
「どの項目を入れるか」
「どんな説明を書くか」
を考えている時間です。
特に、
- 案件ごとに内容が違う
- 担当者の経験で価格を決めている
- 過去案件を参考にしている
- 顧客ごとに文章を変えている
といった会社では、この部分が大きくなります。
ここではAIが役立つ可能性があります。
たとえば過去の見積内容を参考に、
「今回の依頼に近い案件はこれです」
と候補を提示したり、見積書の説明文の下書きを作ったりすることはできます。
ただし、最終的な価格や契約条件までAIだけで決める必要はありません。
考える材料を集めるところをAIに任せ、判断は人が行う。
この分け方のほうが現実的です。
3. 確認している時間
意外に大きいのが承認です。
担当者が見積書を作り、
上司へ送る。
修正指示が返ってくる。
直してもう一度送る。
承認されたらPDFにして顧客へ送る。
このような流れなら、AIよりも先にワークフローを整えたほうが効果が出る可能性があります。
見積作成そのものではなく、
見積作成後のやり取りがボトルネック
だからです。
AI、Excel、自動化、システム開発。どれを選ぶべきか
見積業務を改善するとき、必ずしも新しいシステムを作る必要はありません。
問題によって使うものが変わります。
たとえば、
計算や転記が大変
なら、Excelの関数やマクロだけで十分かもしれません。
過去の見積が探せない
なら、ファイル整理や検索方法の改善から始められます。
説明文を毎回書くのが大変
なら、生成AIが向いています。
担当者によって価格がバラバラ
なら、AI以前に単価や判断ルールを整理する必要があります。
複数人で見積を作り、承認状況も管理したい
なら、業務システム化を検討する価値があります。
つまり、
「見積作成を自動化したい」という相談だけでは、まだ何を導入すべきか決められない。
ということです。
ここを飛ばしてツールを選んでしまうと、「便利になったけれど、思ったほど時間は減らなかった」という結果になりやすくなります。
Excelのままでもよい会社は多い
もう一つ大切なのは、Excelをやめること自体を目的にしないことです。
たとえば、
- 見積を作る人が1〜2人
- 商品数がそれほど多くない
- 承認フローが単純
- Excelで大きな事故が起きていない
- 月に作る見積書もそれほど多くない
のであれば、Excelを少し改善するだけで十分な場合があります。
逆に、
- 担当者によって単価が違う
- 最新の単価表がどれか分からない
- 過去の見積を毎回探している
- 複数人が同じExcelを触る
- 見積の承認状況が分からない
- 見積から受注・請求へ同じ内容を転記している
といった状態なら、Excelの外まで含めて考えたほうがよいかもしれません。
大切なのは、
Excelかシステムかを最初に決めるのではなく、どこで時間が止まっているかを見ることです。
まず「1時間」を分解してみる
見積書を1枚作るのに60分かかっているなら、一度だけ時間を測ってみてください。
たとえば、
- 過去資料を探す:20分
- 単価を確認する:10分
- 入力・計算する:5分
- 説明文を書く:10分
- 社内確認・修正:15分
という結果になったとします。
この会社で最初に自動化すべきなのは、おそらく計算ではありません。
20分かかっている「探す」を改善するほうが先です。
そして、この分解ができると初めて、
- Excelで改善する
- AIを使う
- RPAなどで自動化する
- SaaSを導入する
- 小さな業務システムを作る
といった選択肢を比較できるようになります。
「何を作るか」より、「作る必要があるか」から考える
生成AIが普及し、以前より小さな業務システムを作りやすくなりました。
だからこそ、「作れるかどうか」だけで判断しないことが大切です。
既存のExcelを少し直せば済むなら、それで十分です。
市販サービスで解決できるなら、それを使ったほうがよいでしょう。
AIを使わず単純な自動化で済むなら、わざわざAIを入れる必要もありません。
そのうえで、
「複数の情報をまとめて扱いたい」
「過去データから候補を出したい」
「承認まで含めて一つの流れにしたい」
となったところで、AIやシステム開発を検討します。
見積書を自動化するときに最初に考えるべきなのは、
「どうやって見積書を自動生成するか」ではありません。
「見積書を作る1時間のうち、どこを減らしたいのか」
です。
そこが分かれば、必要な仕組みはかなり絞れます。
自社の場合はどこから手を付ければいい?
テイルウインドでは、現在の業務を確認したうえで、
AIで減らせるところ、普通の自動化で十分なところ、今のままでよいところ
を切り分けるところからご相談いただけます。
「見積作成を自動化したいけれど、Excelを直せばいいのか、AIを使うのか、システムを作るのか分からない」という段階でも問題ありません。
最初からシステム開発を前提にはしません。
まずは今の見積書や業務の流れを見ながら、どこを変えると効果が出そうか整理してみましょう。